御中道

御中道：富士山の歴史と信仰が刻まれた険しい古道

御中道は、富士山を一周する全長約25kmの登山道です。標高2300mから2800m付近の山腹を反時計回りに巡り、かつては富士講信者にとって重要な修行の場でした。その歴史は古く、役行者による「御中道巡り」が始まりと伝えられ、16世紀後半には角行による記録も残されています。

険しい道のり：かつての御中道と現在の状況

御中道は、富士山を取り巻く険しい山肌を縫うように続く過酷な道でした。特に、大沢崩れを含む区間は危険度が高く、現在では通行止めとなっています。かつては一ノ越、二ノ越、三ノ越と経路が変更されてきましたが、1977年の転落事故を契機に、大沢崩れを含む多くの区間は通行禁止となりました。富士講信者でさえ、3回以上の富士登山経験と誓約書が必要となるほど、入山には厳しい条件が課せられていました。

2016年時点では、滑沢と仏石流しの二箇所で崖崩れが発生し、復旧の見通しも立っていません。これらの現状を踏まえ、現在の御中道は、かつての全長約25kmのルート全体を指すのではなく、主にいくつかの区間を指す場合が多いことに注意が必要です。

現在も利用されている区間

御中道のうち、現在も登山道として利用されている区間は、以下の通りです。

河口湖五合目（小御岳神社）〜御庭〜大沢崩れ： これは、現在「御中道」として一般的に認識されている区間の多くを占めます。詳細は、大沢崩れに関する情報をご参照ください。
富士宮口六合目〜宝永第一火口〜御殿場口六合目： 2008年には皇太子徳仁親王（当時）も利用した、富士登山における人気のルート（プリンスルート）の一部です。
吉田口下山道 獅子岩（七合目相当）〜吉田口六合目〜河口湖五合目（小御岳神社）： 富士スバルラインと吉田口登山道を繋ぐ重要なルートであり、富士登山で最も利用者の多い吉田ルートの下山道の一部となっています。
須走口本六合目〜吉田口下山道 獅子岩： 利用者は少ないものの、昭文社の山と高原地図などにも登山道として掲載されています。
須走口新六合目〜吉田口六合目： 「平成御中道」と呼ばれ、比較的整備された登山道となっています。

現在、登山道としては廃止されている区間

以下の区間は、現在では登山道としては廃止されています。

御殿場口六合目〜須走口本六合目
* 富士宮口六合目〜大沢崩れ

御中道を構成する沢

御中道周辺には多くの沢が存在し、その険しさに拍車をかけています。主な沢としては、日沢、市兵衛沢、表大沢、赤沢、青沢、箱荒沢（第1・第2）、主杖流し、鬼ヶ沢、桜沢、竹沢、不動沢、大沢、前沢、二番沢、一番沢、仏石流し、滑沢、白草流し、青草流し、大流し、小御岳流し、吉田大沢、ツバクロ沢、滝沢などがあります。（国土地理院データに基づく）

御中道の歴史と現状

御中道は、富士山信仰の歴史と深く結びついた重要な道でした。かつては厳しい修行の場として、多くの富士講信者によって利用されてきました。しかし、時代の変遷と自然の脅威により、現在ではその多くが通行不可能となっています。残された区間は、歴史的価値と自然の厳しさを伝える貴重な存在であり、訪れる際には安全に配慮し、自然環境への配慮を忘れずに登山を楽しむべきでしょう。

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