大泉孝

大泉孝（おおいずみ たかし）

大泉孝は、1902年（明治35年）4月12日に生まれ、1978年（昭和53年）9月7日に亡くなった、日本のカトリック教会における重要な人物です。イエズス会司祭として、また教育者として、その生涯を日本の発展に捧げました。特に上智大学においては、学長という重責を担い、その発展に大きく貢献しました。

生い立ちと修道生活

大泉孝は、宮城県柴田郡大河原町のカトリックの家庭に生まれました。幼少期から信仰に親しみ、柴田農林学校、宮城農学校を経て、1924年（大正13年）に上智大学哲学科に入学しました。大学で哲学を学ぶ中で、自身の信仰を深め、1929年（昭和4年）に渡欧しイエズス会に入会しました。その後、オランダのファルケンブルク大学とイギリスのヒースロップ大学で神学を修め、1937年（昭和12年）に司祭に叙階されました。洗礼名はフランシスコ・ザビエルです。

上智大学での活動

1939年（昭和14年）に帰国した大泉孝は、上智大学の教授に就任しました。その翌年には理事となり、大学運営の中核を担うようになりました。1945年（昭和20年）4月には副総長（後に副学長と改称）に就任し、戦後の大学改革に尽力しました。1951年（昭和26年）には上智学院理事長に、そして1953年（昭和28年）には上智大学長に就任し、大学の発展に大きく貢献しました。

学長在任中は、教育環境の整備、研究活動の推進、国際交流の強化などに力を注ぎ、上智大学を日本を代表する大学の一つへと成長させました。

社会活動

大泉孝は、教育界におけるリーダーシップも発揮しました。大学設置審議会会長（1957年）、大学基準協会会長（1959年）、私立学校振興会会長（1966年）、中央教育審議会会長（1972年）、日本私立大学連盟会長（1975年）など、数々の要職を歴任しました。これらの役職を通じて、日本の教育制度の発展に貢献し、特に私立大学の振興に尽力しました。また、中央教育審議会会長としては、日本の教育政策の策定にも深く関与しました。

翻訳活動

大泉孝は、翻訳家としても活動しました。特に、カトリック神学や哲学に関する書籍を翻訳し、日本の読者に紹介しました。主な訳書には、以下のものがあります。

ユングラス著 『カトリック教理神学概説』（1941年）
ブルンナー著 『ブルンナー哲学概論』（1942年）
アントニオ・アストライン著 『聖イグナシオ・デ・ロヨラ伝』（1949年）
フランツ・ケーニヒ著 『宗教学概論』（1954年）

これらの翻訳書は、日本のカトリック教徒や研究者にとって重要な文献となり、今日の神学研究においても参照されています。

まとめ

大泉孝は、イエズス会司祭、教育者、そして翻訳家として、多岐にわたる分野で顕著な業績を残しました。特に、上智大学の発展に大きく貢献し、日本の教育界、カトリック教会において、その影響は今もなお続いています。彼の生涯は、信仰と学問、そして社会貢献への情熱が結びついた、模範となるものでした。

参考文献

日本キリスト教歴史大事典編集委員会 『日本キリスト教歴史大事典』 教文館、1988年
新カトリック大事典編纂委員会 『新カトリック大事典』 第1巻、研究社、1996年

もう一度検索