大津四号

大津四号：早生で高糖度な温州みかん

大津四号は、神奈川県足柄下郡湯河原町で生まれた温州みかんの品種です。その名の通り、複数の候補の中から選抜された4号系統が、1977年に品種登録されました。

誕生秘話：十万温州からの選抜

大津四号のルーツは、「十万温州」という温州みかんの品種にあります。1964年、湯河原町の農家、大津祐男氏が十万温州の珠心胚実生から、優れた系統を選び出しました。数多くの実生苗の中から、最も早く実を結び、味も優れた4号が選ばれ、品種登録に至ったのです。選抜には、梶浦実氏や大垣智明氏らの助言も得られています。

大津氏は、根府川分室から譲り受けた十万温州の穂木を高接ぎし、1964年に収穫した果実から種を採取。1965年3月に播種し、1966年4月にはカラタチ台に接ぎ木を行い苗木を育成しました。そして、1977年、ついに初結実。その中から、4号が選抜され、大津四号として世に出ることになったのです。湯河原町では、大津四号の他に五号や八号も栽培されていますが、見た目では区別が難しく、「大津みかん」と呼ばれて親しまれています。地元農家からは、大津五号の方が品質が良いという声も聞かれます。

特徴：大玉で扁平な果実、強い樹勢

大津四号は、樹勢が強く、枝張りが広いのが特徴です。果実は大玉で扁平な形状をしており、11月下旬から12月には美しい着色をみせます。糖度が高く、早生であることから、高糖度系品種として「青島温州」と共に知られています。一方で、隔年結果性（収穫量が年によって大きく変動すること）が強いことも留意すべき点です。

大津氏自身の栽培経験から得られた知見も興味深いです。例えば、「選定した切り口が横を向いている様ならだめ。立ち枝の上向き花ではなく、横向きの枝の花がいい。下手な摘果ならしない方がましだ。高接更新樹より、苗木から仕立てた方が成果を上げている。抵触するなら直根が出ないようにすること。また、移植もよい」といった栽培上のアドバイスを残しています。これらの経験則は、大津四号を栽培する上で非常に役立つでしょう。

「ひめのか」との関係

愛媛県立果樹試験場が育成した温州みかんの品種「ひめのか」は、大津四号の珠心胚実生から選抜された品種です。大津四号との血縁関係を示しており、その遺伝的な背景を知る上で重要な情報と言えます。

まとめ：大津みかんの魅力

大津四号は、早生、高糖度、大玉と三拍子揃った優れた温州みかんの品種です。その誕生秘話や特徴、栽培上の注意点、そして「ひめのか」との関係を知ることで、大津みかんの奥深さをより一層理解できるでしょう。神奈川県湯河原町で育まれたこのみかんは、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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