大津市民の歌

大津市民の歌

「大津市民の歌」は、日本の滋賀県大津市によって1958年（昭和33年）に制定された公式な市民歌です。

制定の背景と歴史

大津市には、現在の市民歌以前にも歌が存在していました。

1920年（大正9年）10月には、桃山墓陵墓監を務めていた猪谷不美夫氏が作詞し、滋賀県師範学校の教諭だった竹内岩尾氏が作曲を手掛けた「大津市歌」が制定されています。これが初代の市歌にあたります。

その後、1933年（昭和8年）4月16日には、滋賀郡の膳所町（ぜぜちょう）および石山町（いしやまちょう）との合併が実施されました。この広域合併を記念して、滋賀県内務部長であった三樹樹三（みき じゅぞう）氏が作詞し、滋賀女子師範学校の教授であった須川政太郎氏が作曲した記念歌「大大津の歌」が発表されています。

初代「大津市歌」は、その後の市域拡大や第二次世界大戦の終結といった大きな変化を経ても、引き続き市の歌として位置づけられていました。しかし、制定から時を経て楽譜の現存が確認できなくなってしまいました。この状況を受け、1958年（昭和33年）に迎えた市制60周年という節目を機に、新たな市民歌を作成する機運が高まりました。

市民歌の誕生

新しい市民歌の作成にあたっては、歌詞の懸賞募集が行われました。この募集には88名からの応募がありました。数多くの応募作の中から、当時、後に滋賀大学教育学部の教授となる塩見淳一氏の作品が入選し、新たな市民歌の歌詞として採用されることになりました。

採用された歌詞に対し、作曲は市からの依頼を受けた著名な作曲家、平井康三郎氏が担当しました。塩見氏の歌詞と平井氏のメロディーが組み合わされ、「大津市民の歌」は完成しました。

正式な制定は1958年（昭和33年）5月17日付で行われました。同日には、滋賀会館にて発表演奏会が開催され、市民に向けて新しい歌が披露されました。

この歌は記録としても残されています。大津市によって自主製作されたSPレコード盤が存在しており、A面には安則雄馬氏と景山木美子氏によるデュエット歌唱、B面には管弦楽による演奏がそれぞれ収録されています。このレコードの規格品番はH3042-A/Bです。

現在の利用状況

「大津市民の歌」は、制定から半世紀以上が経過した現在も、大津市の公式な歌として大切にされています。

市が毎年発行している『大津市勢要覧』には、必ず「大津市民の歌」の歌詞と楽譜が掲載されており、市民が歌に触れる機会が設けられています。

大津市役所によると、この歌は市が主催する公式な式典などで歌われているとのことです。市制記念行事やその他の重要な集まりにおいて、市民の連帯感や郷土愛を育むシンボルとして歌い継がれています。

参考文献等

本稿の記述にあたっては、以下の資料などが参照されています。

中村紅雨『大津市三十年史』（潮国社、1928年）
滋賀日日新聞社 編『滋賀年鑑』昭和33年版・昭和34年版（1957年・1958年）
『新修大津市史』第6巻〈現代〉（大津市役所、1983年）
中山裕一郎 監修『全国 都道府県の歌・市の歌』（東京堂出版、2012年）

関連情報として、滋賀県の市町村歌一覧や滋賀県民の歌、あるいは市の公式サイトにある市民憲章などと共に紹介されることがあります。

「大津市民の歌」は、大津市の歴史と歩みを映し出し、市民に親しまれる歌として、これからも歌い継がれていくことでしょう。

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