大津市立志賀中学校

大津市立志賀中学校

大津市立志賀中学校は、滋賀県大津市の比良山麓、南船路に位置する公立中学校です。約3万9千平方メートルに及ぶ広大な敷地を持ち、鉄筋三階建ての校舎4棟と屋内体育館を備えています。学校が広範な校区をカバーしているため、生徒の約8割が湖西線を利用して通学しています。

校名の「志賀」は、木戸の出身であり行司の祖として崇敬される志賀清林の名にちなんで名付けられました。また、校章も志賀清林と当時の志賀町の「志」の文字を図案化したもので、これには「学問や目標を高く志す」という意味が込められています。

沿革

本校の歴史は、戦後間もない1947年（昭和22年）に始まります。滋賀郡に属していた和邇村立和邇中学校と木戸村立木戸中学校が合併し、「和邇村・木戸村学校組合立志賀中学校」として設立されました。

1949年（昭和24年）7月には、さらに小松村立小松中学校が合併に加わります。この際、旧小松中学校の校舎は「小松校舎」として引き続き使用され、分校のような形で1977年（昭和52年）まで存続しました。
1953年（昭和28年）4月、和邇村大字今宿（現在の大津市今宿）に新しい校舎が完成し、これまでの和邇校舎と木戸校舎が統合されました。
1955年（昭和30年）10月1日、関係する和邇村、木戸村、小松村が合併して志賀町が発足したのに伴い、「志賀町立志賀中学校」と改称します。
1977年（昭和52年）4月4日には、今宿の本校と北小松地区にあった分校（小松校舎）が統合され、現在の形へ近づきます。
2006年（平成18年）3月20日、志賀町が大津市に編入されたことにより、「大津市立志賀中学校」として現在に至ります。

教育方針においては、2010年度から「協同的な学びのある授業づくり」を推進。特に2012年度からは、生徒の発言が教室全体に行き渡るよう、すべての授業でコの字型の座席配置を採用していました。ただし、2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一般的な座席配置に変更されています。

志賀中学校統合問題

現在の南船路に統合中学校が建設されるまで、志賀中学校は和邇地区の今宿に本校が置かれ、南小松に分校が併存する形態でした。この分校体制は、当時の志賀町の教育運営や財政にとって非効率であるとの認識から、本校と分校を統合して新しい中学校を建設する計画が浮上します。1972年（昭和47年）には、中学校建設促進委員会が設置されました。

町内には複数の建設候補地がありましたが、意見が集約されず、最終的に当時の添田弘之町長に一任されることとなりました。1973年（昭和48年）4月17日の臨時町議会で、町長は南部の地価高騰を理由に現時点での建設は困難とし、木戸地区の蓬莱付近に新校舎を建設する意向を表明。これに関連する議案は、同年6月の議会で多数決により可決されました。

この決定に対し、和邇地区は当初反対の姿勢を示しましたが、「びわ湖ローズタウン」の開発に伴い和邇地区にも将来的に中学校を新設する予定であり、そのための基金を積み立てるという町長の言質を得て、移転に同意しました。しかし、南部地区の新中学校建設のための基金積立条例案は、志賀町北部選出の議員たちの反対工作により審議が引き延ばされ、継続審議となってしまいます。

これを受けて、町長の約束が守られていないと感じた和邇地区の住民は、1973年11月に「中学校移転反対期生同盟」を結成。同盟は、和邇地区の全役職者による辞表提出、町行政事務のボイコット、納税拒否といった「分町運動」を展開し、事態は深刻化しました。

事態を重く見た滋賀県は収拾に乗り出し、調停案として「現校舎を和邇校舎として存続させること」「老朽化した現校舎は早急に改修すること」「びわ湖ローズタウンの公共投資金約2億6000万円を和邇校舎建設の基金に積み立てること」の3条件を提示しました。和邇地区はこの案を受け入れる意向を示しましたが、北部である小松地区選出の町議は、これでは統合にならないとして反発。町長も一時はこの3条件を撤廃し別の妥協案を探ると表明しました。

しかし、県の強い円満解決への働きかけもあり、1974年（昭和49年）3月26日、町長と同盟会は改めて3条件を確認し、交換文書に調印。同日、町議会もこれを了承しました。

1974年6月には町長選挙が実施され、中学校統合問題が最大の争点となりました。4人が立候補する中、旧木戸村蓬莱地区への新校舎建設を公約に掲げた現職の添田町長が再選されます。これを受け、1978年（昭和53年）の統合開校を目指し、地主30人から約4万平方メートルの用地買収が開始されました。

この時点でも、和邇地区は滋賀県提示の調停案が守られていないとして再び建設に反対の姿勢を示していましたが、1975年（昭和50年）6月19日、滋賀県知事である武村正義が立会人となり、新たな協定書が志賀町と和邇地区の間で調印されました。この協定書には、「和邇地区に新たな中学校を1校新設する」「1977年（昭和52年）までに建設に着手する」「1979年（昭和54年）4月には開校する」「これらの協定が不履行の場合は和邇地区の分町を認める」といった内容が盛り込まれていました。

しかし、新校舎建設のための用地買収は一部の地主から同意が得られず難航。10月7日には一部が未買収のまま起工式が強行されました。用地買収の遅れに加え、買収を巡る不正疑惑も浮上し、1976年（昭和51年）1月6日には和邇地区の代表者7名が地方自治法に基づき監査請求を町監査委員会に提出する事態に至ります。町長は前年末に不正を否定する声明を出していましたが、用地買収の目途が立たないことから、監査請求が出されたわずか2日後の1月8日に辞意を表明しました。さらに、監査委員も町長不在の中で辞意を示すなど、町政は一時混乱に陥りました。

1976年2月22日に行われた町長選挙では、元町長の山本忠八氏が当選しました。新町長は、統合中学校の建設を推し進める一方、町と和邇地区との協定書に基づき、和邇地区の新中学校を昭和52年度に町独自の予算で着工する意向を示し、建設費としてびわ湖ローズタウンからの収益の一部である1億円を基金に積み立てることを表明しました。こうして、長年にわたる複雑な経緯を経て、1977年（昭和52年）4月4日に現在の統合された志賀中学校が完成し、開校に至りました。

通学区域

本校の通学区域は、以下の小学校区を包含しています。

大津市立小松小学校
大津市立木戸小学校
大津市立和邇小学校
大津市立小野小学校

著名な卒業生

本校からは、様々な分野で活躍する著名な卒業生が輩出されています。

中本哲也（お笑い芸人、テツandトモのメンバー）
田中聡（元プロ野球選手）
矢島卓郎（元サッカー選手）
小熊凌祐（プロ野球選手、中日ドラゴンズ所属）
はなお（YouTuber、はなおでんがんのメンバー）

参考文献

志賀町誌編集委員会『志賀町誌 第3巻』志賀町、2002年

関連項目

滋賀県中学校一覧

外部リンク

* 大津市立志賀中学校（公式サイト）

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