大湯温泉スキー場

新潟県魚沼市の、かつて上折立という地に存在したスキー場、それが大湯温泉スキー場でした。豊かな自然に囲まれた湯之谷温泉郷の中に位置する、歴史ある大湯温泉の温泉街にほどなく隣接しており、スキーを楽しんだ後にすぐに温泉で体を温めることができるという、スキーと温泉を同時に満喫できる極めて利便性の高い立地を誇っていました。多くの人々にとって、この温泉街との一体感こそが、大湯温泉スキー場を選ぶ大きな理由の一つとなっていたことでしょう。残念ながら、2020年から2021年にかけての冬季シーズンをもって、スキー場としての営業を終え、その約60年にわたる歴史に静かにピリオドを打ちました。

その始まりは、日本が高度経済成長の入り口に差し掛かっていた頃の昭和35年（西暦1960年）に遡ります。当時の湯之谷村が、地域振興の一環として運営を開始した村営スキー場として産声を上げました。以降、地域の冬のレジャー施設として、また温泉街を訪れる観光客向けの施設として、長年にわたり多くの人々に親しまれてきました。村営という形態は、営利目的一辺倒ではなく、地域住民や来訪者へのサービス提供という側面が強かったことを示唆しています。

施設の規模は、現代の大規模リゾートスキー場と比較すると控えめでした。スキーヤーを山頂へ運ぶ手段であるリフトは、わずか1基のみが設置されていました。また、自家用車で訪れるスキー客のための駐車場も、約50台分程度と限られていました。これらの施設規模から、魚沼市内に点在する他のスキー場と比較しても、最も小ぢんまりとした部類に入っていたことは明らかです。しかし、この規模の小ささが、かえって混雑しにくく、地元の人々に愛されるアットホームな雰囲気や、知る人ぞ知る穴場のような魅力を生み出していた可能性も考えられます。

大湯温泉スキー場を訪れる客層としては、ご家族連れが多く見受けられたとされています。雪遊びや、初めてのスキー・スノーボードに挑戦する子供たちの姿も少なくなかったことでしょう。しかし、実際に滑走するゲレンデは、その地形からくる特徴として、比較的急な傾斜と限られた幅を持っていました。このため、全くの初心者や、緩やかな斜面で練習したいスキーヤーにとっては、少々難易度が高く、中級者以上向けの側面が強かったという声もありました。ファミリー層が多いという傾向と、ゲレンデが必ずしも初心者向きではなかったという特性は、大湯温泉スキー場の持つ興味深い一面でした。

冬のシーズン終盤にあたる毎年2月末頃には、「スキーカーニバル」と銘打たれたイベントが例年開催されていました。このイベントは、様々なアトラクションや催し物が行われ、地域住民や訪れた人々で賑わいを見せるなど、スキーシーズンを締めくくる活気あるお祭りとして親しまれていました。雪深い冬を彩る、地域の大切なイベントの一つでした。

前述の通り、アクセスに関しては、大湯温泉の温泉街に隣接していたため、湯之谷温泉郷全体への利便性がそのまま活かされる形でした。公共交通機関を利用して温泉郷まで来れば、比較的容易にスキー場へたどり着くことができ、宿泊施設からも歩いてアクセス可能な場合もあったようです。

地域に根ざし、約60年もの長きにわたり冬のレジャーを提供し続けてきた大湯温泉スキー場ですが、残念ながら2020-2021シーズンでの営業終了という形で、その歴史に幕を閉じました。長年にわたり親しまれてきた施設が一つ姿を消すことは、地域の冬の風景から一つの要素が失われることを意味します。かつて白銀のゲレンデに響いていた子供たちの歓声や、スキーを楽しむ人々の声は今はありません。しかし、大湯温泉スキー場が存在した記憶は、地域住民や、かつてここを訪れて冬の思い出を作った多くの人々の心の中に、これからも残り続けることでしょう。

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