大牟田市歌

大牟田市歌について

大牟田市歌（おおむたしか）は、福岡県大牟田市に採用された市の歌です。この歌は、初代と二代目の2つの異なるバージョンが存在し、それぞれが異なる歴史や背景を持っています。両バージョンともに、かつての大牟田市の主力産業である炭鉱を詩の中で取り上げており、地域の産業や市民の精神を表現しています。

初代大牟田市歌

初代の「大牟田市歌」は1933年（昭和8年）に制定され、その作詞者は不明なままとなっていますが、曲は梁田貞によって作られました。この歌は1927年（昭和2年）の市制10周年を記念する懸賞において一等賞を受賞したもので、歌詞は大牟田市の炭鉱業の栄光を称えています。1番から4番まで繰り返される「炭 日本の覇を唱え」というフレーズは、当時の三井三池炭鉱の重要性を際立てるものでした。また、工場から立ち上る煙を「産業発展の証」として描く一方で、1983年の文献ではその公害問題にも触れられています。

二代目大牟田市歌

二代目の「大牟田市歌」は1952年（昭和27年）に制定されました。これは、NHK福岡放送局の開局20周年を記念して、大牟田市や久留米市、福岡市などが協力して制定したものです。この歌の作詞は吉田尊治、作曲は古関裕而によるもので、戦後の復興期の希望と平和への願いが盛り込まれている点が初代との大きな違いです。特に3番と4番では「平和」や「復興」が強調される一方、1番と2番では炭鉱と工業の現実に触れています。

制定後、曲は広く市民の間で歌い継がれ、小学校の教材にも使われていましたが、炭鉱の閉山に伴い、演奏される機会は徐々に減少。1997年に三井三池炭鉱が閉山した後は、市の公式行事での演奏は1992年に行われた75周年記念式典が最後となりました。市は80周年記念としてさだまさしの「チャンス」を市のイメージソングに採用しましたが、二代目市歌は公式に廃止されずに残っています。

現代の大牟田市歌

2020年に放送された朝の連続テレビ小説『エール』では、二代目「大牟田市歌」の作曲者である古関裕而が主人公として描かれ、その結果、曲は再び注目を集めました。その年の10月には、特別なコンサートが開催され、新型コロナウイルスや豪雨からの復興を祈る意義を込めて、この市歌も演奏されました。大牟田市の音楽文化において、今回の演奏は28年ぶりの公の場でのパフォーマンスとなりました。

大牟田市歌は、地域のアイデンティティを形作る重要な文化遺産であり、未来に向けての希望や市民の心を伝える存在として、今後も大切にされることでしょう。

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