大牟田爆発赤痢事件

大牟田爆発赤痢事件の概要

大牟田爆発赤痢事件は、1937年9月25日に福岡県大牟田市で発生した集団赤痢感染事件で、通称『爆発赤痢』と呼ばれます。この事件では、多くの市民が高熱や嘔吐、痙攣を引き起こし、次々と倒れていきました。発生から数日後、病院は患者で溢れ、最終的に7800人から12332人もの人々が赤痢に罹患し、712人が命を落としました。これは当時の大牟田市の人口11万人を考えると、大変な規模の感染拡大であることが分かります。

原因と調査

事件の原因に関しては、内務省や陸軍省、さらには九州の大学などの機関が調査を行いました。その結果、当初は上水道の貯水井戸・第三源井を管理していた番人一家の幼児の汚水が浸入したことが原因とされました。特に、この幼児は赤痢菌の保菌者であったため、彼のおむつを洗濯した水が井戸から流入したという説が有力視されました。この問題を受け、大牟田市水道課長であった塚本久光は市長と共に責任をとって辞任しました。

厚生省はこの事件を水道汚染による伝染病の集団発生の一例として、特筆するものとしてまとめました。

疑念と異論

しかし、事件の調査においては一部の疑念が提起されています。水道課長の塚本久光は、早くから「水道汚染説」に異議を唱えていました。彼の死後に水道局内で発見された資料では、以下のような議論があります。

• - 疫痢の症状に似ているにもかかわらず、一部の患者には疫痢の診断は下されなかった。
• - 水質調査と細菌培養試験が行われたものの、赤痢菌は発見されなかった。
• - 第三源井は当年春に改修されており、貯水井戸を経由しない取水路に変更されていた。
• - 番人一家の幼児は赤痢ではなく消化不良だったという医療記録が残されている。
• - 事故の数日前に寄港した船の乗組員からの報告は全て「異常なし」という内容だった。

更に、事件当日の三井三池染料工業所での爆発事故が注目されました。事故の発生時間帯と市民が倒れた時間が一致し、また第2の爆発事故では消防隊の入場が拒否されたことも問題視されました。この染料工業所が当時、軍需品の製造を行っていたことも相まって、赤痢菌が軍製品と関係しているのではないかとの見解もあります。

政府による追及

この事件はその後も国会で取り上げられ、1970年代に入ってからも複数の議員によって質問主意書が提出されるなど、解明が進められました。特に楢崎弥之助議員が1971年5月に衆議院内閣委員会でこの問題を扱い、強く追及しました。

参考文献

• - 塚本唯義『大牟田爆発赤痢事件の真相』(1972)
• - 大山巌『昭和史を歩く』(1987)
• - 大牟田「（いわゆる）爆発赤痢」研究会『大牟田市に起こった『爆発赤痢』のナゾに迫る 』(2005)

この事件は、当時の社会情勢や公衆衛生に関する問題の象徴であり、今もなお多くの疑問とともに研究が続けられています。

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