赤痢

赤痢についての詳細

赤痢（せきり）は、発熱、下痢、血便、腹痛を伴う大腸の感染症であり、その病名は赤い血液が混じった下痢からきています。昔は「血屎（ちくそ）」とも呼ばれ、様々な形で感染してきました。現在、赤痢は主に細菌性赤痢とアメーバ赤痢に分類されています。一般的に「赤痢」と言う場合、赤痢菌による細菌性赤痢を指すことが多いです。

細菌性赤痢の概要

細菌性赤痢（Shigellosis）は、赤痢菌と呼ばれる病原菌によって引き起こされる感染症です。この感染症は、大腸内に出血や潰瘍を引き起こし、激しい炎症を伴います。感染は主に糞便を介して行われ、食べ物や水を通じても広がることがあります。サルからの感染事例も稀にあります。

1897年、日本で赤痢が流行した際に、医学者の志賀潔が最初の赤痢菌を発見しました。これにより、学名として「Shigella」が付けられました。赤痢菌はAからDの4つの群に分かれており、近年ではD群赤痢菌による感染例が増えています。かつて広域に感染が見られたA群赤痢菌の感染例は今では激減していますが、B群やD群は先進国でも報告されています。

症状と感染

赤痢菌に感染すると、潜伏期間は1から5日程度で、発熱、腹痛、下痢などの症状が現れます。特にA群赤痢菌による感染の場合、高熱や激しい腹痛、さらに膿や粘液、血液を伴う下痢が見られることが多いです。このため、赤痢という名称がつけられています。重症化する場合もあり、乳幼児や高齢者は特に注意が必要です。A群以外の感染は軽症で済むことが多く、回復も比較的早いです。

課題と治療

細菌性赤痢の治療は対症療法が中心で、抗菌剤による除菌も行われます。しかし、下痢止めは合併症のリスクが高いため、原則として使用しません。日本では、この病気は感染症法の三類感染症に指定されており、感染が確認された場合は速やかに報告義務があります。

現在、赤痢に対するワクチンの研究が進められており、特に経済的に困難な地域での使用が期待されています。岡山大学がインドで行っている研究は、廉価な赤痢ワクチンの開発に向けた重要なステップとして注目されています。

アメーバ赤痢の説明

アメーバ赤痢（Amoebiasis）は赤痢菌ではなく、アメーバによって引き起こされるため、寄生虫症に分類されます。性感染症としても知られ、特に男性同性愛者や旅行者に感染が見られることが多いです。アメーバ赤痢は日本国内での発症は少なく、五類感染症に指定されています。

歴史的背景

日本の歴史書にも赤痢の記録が残っており、平安時代から大流行の記述が存在します。特に戦前や戦後の集団感染が記録されています。1935年の川崎市や1937年の福岡県での赤痢流行は特に有名で、これらの事例からも水源の衛生管理の重要性が認識されました。近年でも、大規模な集団発生が起こった事例があり、防疫対策の遅れが問題視されています。

赤痢は歴史的にも重要な感染症として認識されており、現在も防疫対策や治療法の向上が求められています。

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