大田英雄

大田英雄：軍人の息子から平和教育者へ

大田英雄は、1934年に神奈川県横須賀市で生まれ、2005年に生涯を閉じた日本の教師であり、平和運動家です。彼の人生は、父親である大田実海軍中将の存在と、沖縄戦という悲劇に深く影響されました。

軍国少年から教師への転身

大田英雄は、沖縄戦で海軍陸戦隊を指揮した父・大田実の影響を受け、幼少期は軍国少年として育ちました。防衛大学校への進学を目指していましたが、1952年に父の遺骨と対面した際、ピストルの穴が空いた頭蓋骨を見て、軍人の無意味さを感じ、教師になることを決意します。

広島大学教育学部高校教育社会学科に進学後、社会科教師として広島県内の各地の高校に赴任しました。教鞭を執る傍ら、反戦活動にも積極的に取り組み、原水爆禁止呉協議会事務局長、高教組呉地区支部平和教育推進部長、呉地区高校生「平和の集い」顧問、歴史教育者協議会会員などを歴任し、平和教育に尽力しました。

沖縄への旅と地雷の悲劇

父親が戦死した沖縄を度々訪問し、1989年には著書『沖縄海軍部隊司令官とその息子の歩いた道』を出版しています。沖縄戦研究家の安仁屋政昭とは大学の同窓生でした。

大田英雄の平和運動における転機となった出来事があります。1981年に沖縄を訪れた際、海軍司令部壕近くの残留地雷の爆発で幼稚園児の娘を失った女性と出会い、「地雷を埋めたのは大田中将です」という言葉を投げかけられました。この言葉は、彼の心に大きな衝撃を与え、著書では「心にビンタを受けた」と述懐しています。

家族との関係

弟である大田畯は海上自衛官であり、湾岸戦争後の自衛隊ペルシャ湾派遣の際の指揮官を務めました。大田英雄とは異なる道を歩んだことから、かつてはよく口論をしたものの、互いの目指す平和は同じだと考えていました。畯がペルシャ湾へ派遣される際、出港の5時間前に掃海母艦はやせを訪れ、畯に「お前も平和が目的だろ。一人も殺さず帰って来い」と声をかけたというエピソードも残っています。

姉の板垣愛子は、パーフェクトリバティー教団（PL教団）大本庁の教校長を務めています。

著書

* 『父は沖縄で死んだ - 沖縄海軍部隊司令官とその息子の歩いた道』高文研、1989年。ISBN 978-4874981047


大田英雄は、軍人の息子として生まれながらも、戦争の悲惨さを目の当たりにし、平和を希求する教師へと転身しました。彼の生涯は、戦争の悲劇を繰り返さないための平和教育の重要性を私たちに教えてくれます。

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