大田実

大田實 (おおた みのる)

大田實は、1891年（明治24年）4月7日に生まれ、1945年（昭和20年）6月13日に戦没した大日本帝国海軍の軍人です。最終階級は海軍中将。千葉県長生郡長柄町の出身。

生涯

旧制千葉県立千葉中学校から海軍兵学校と陸軍士官学校の両方に合格。海軍兵学校を卒業後、海軍における陸戦の権威者として頭角を現しました。

軍歴

1932年（昭和7年）：第一次上海事変に上海陸戦隊第5大隊長として参戦。
二・二六事件：佐藤正四郎麾下の陸戦隊大隊長として東京へ出動。
1939年（昭和14年）：呉鎮守府第六特別陸戦隊司令として海南島占領作戦に参加し、三亜を占領。
1942年（昭和17年）：ミッドウェー海戦において、第二連合特別陸戦隊司令官としてミッドウェー島上陸部隊の海軍指揮官となるも、作戦は中止。
1943年（昭和18年）：第八連合特別陸戦隊司令官としてニュージョージア島のムンダの守備に当たるも、コロンバンガラ島へ撤退。
沖縄戦：沖縄根拠地隊司令官として沖縄本島小禄半島での戦闘を指揮。

沖縄戦と最期

沖縄戦では、海軍部隊の最先任者として約1万人の部隊を率いて小禄半島で米軍と激戦を繰り広げました。しかし、陸軍の首里からの撤退に際して、海軍司令部は作戦会議に呼ばれず、撤退を知らされたのは直前だったとされています。

一度は重火器を破壊して南部への撤退を始めたものの、後に命令を勘違いしていたことが判明し、再び小禄へ引き返しました。その後、「摩文仁へ撤退せよ」との命令が出されるも、大田は従わず、小禄で指揮を続けました。

1945年6月13日、米軍の攻撃により司令部が孤立。大田は豊見城にあった海軍壕内で拳銃で自決。その死後、海軍中将に特別昇進しました。

人物像

大田は、穏やかで包容力があり、責任感の強い人物だったと伝えられています。いかなる状況でも不満を漏らさず、他人を誹謗するような言動はなかったと言われています。

海軍次官宛の電報

自決する直前、海軍次官宛に沖縄県民の敢闘の様子を訴える電報を発信しました。この電報は、当時の訣別電報の常套句である「天皇陛下万歳」などの言葉はなく、ひたすら沖縄県民の苦境を訴えたものでした。

この電報の内容から、大田が沖縄県民に対して深い同情と敬意を抱いていたことが伺えます。また、大田の死後、この電報は広く知られるようになり、沖縄戦における県民の犠牲を伝える重要な資料となりました。

年譜

1891年（明治24年）4月7日：千葉県長生郡長柄町に生まれる
1905年（明治38年）4月1日：千葉県立千葉中学校入学
1910年（明治43年）3月31日：千葉県立千葉中学校卒業
1910年（明治43年）9月12日：海軍兵学校入校
1913年（大正2年）12月19日：海軍兵学校卒業、少尉候補生・装甲巡洋艦「吾妻」乗組
1914年（大正3年）4月20日：練習艦隊遠洋航海出発
1914年（大正3年）8月11日：帰着
1914年（大正3年）8月15日：戦艦「河内」乗組
1914年（大正3年）12月1日：任 海軍少尉
1915年（大正4年）6月30日：公務負傷に拠り待命
1915年（大正4年）10月27日：戦艦「扶桑」乗組
1916年（大正5年）12月1日：任 海軍中尉・海軍砲術学校普通科学生
1917年（大正6年）11月14日：肺結核療養に依り待命
1918年（大正7年）9月20日：横須賀鎮守府附
1918年（大正7年）12月1日：海軍水雷学校普通科学生
1919年（大正8年）5月23日：海軍砲術学校普通科再入学
1919年（大正8年）12月1日：佐世保海兵団分隊長心得
1920年（大正9年）7月1日：兼 教官心得
1920年（大正9年）12月1日：任 海軍大尉・海軍砲術学校高等科第20期学生
1921年（大正10年）1[[1月29日]]：海軍砲術学校高等科卒業
1921年（大正10年）12月1日：巡洋戦艦「比叡」分隊長
1923年（大正12年）8月13日：戦艦「扶桑」分隊長
1924年（大正13年）12月1日：横須賀鎮守府附
1925年（大正14年）12月1日：海軍砲術学校教官 兼 海軍機関学校教官
1926年（大正15年）12月1日：任 海軍少佐
1928年（昭和3年）6月25日：免 海軍機関学校教官 任 海軍工機学校教官
1928年（昭和3年）1[[2月10日]]：第1遣外艦隊司令部附（山東省居留民保護）
1929年（昭和4年）9月25日：佐世保鎮守府附
1929年（昭和4年）11月1日：横須賀海兵団分隊長兼教官（陸戦術担当）
1930年（昭和5年）6月1日：兼 砲術長
1931年（昭和6年）11月2日：海軍砲術学校教官（陸戦術担当）
1932年（昭和7年）1月29日：第1遣外艦隊司令部附上海陸戦隊第5大隊長
1932年（昭和7年）4月20日：海軍砲術学校教官
1932年（昭和7年）12月1日：任 海軍中佐
1936年（昭和11年）12月1日：戦艦「山城」副長
1937年（昭和12年）10月16日：特務艦「鶴見」艦長
1937年（昭和12年）12月1日：任 海軍大佐
1938年（昭和13年）8月10日：軍令部出仕（海南島上陸作戦研究）
1939年（昭和14年）1月20日：呉鎮守府第6特別陸戦隊司令
1939年（昭和14年）4月1日：第6防備隊司令
1939年（昭和14年）4月15日：呉海兵団副長兼教官
1941年（昭和16年）11月1日：支那方面艦隊司令部附第1遣支艦隊司令部附漢口海軍特務部長
1942年（昭和17年）1月15日：横須賀鎮守府出仕
1942年（昭和17年）1月16日：三重海軍航空隊設立準備委員長
1942年（昭和17年）4月28日：軍令部出仕
1942年（昭和17年）5月1日：第2聯合特別陸戦隊司令官
1942年（昭和17年）7月1日：呉鎮守府附
1942年（昭和17年）8月10日：佐世保第2海兵団長
1942年（昭和17年）11月1日：任 海軍少将
1942年（昭和17年）11月11日：第八艦隊司令部附
1942年（昭和17年）1[[1月20日]]：第8聯合特別陸戦隊司令官
1943年（昭和18年）6月9日：勲二等瑞宝章受章
1943年（昭和18年）12月1日：第14根拠地隊司令官
1944年（昭和19年）2月10日：軍令部出仕
1944年（昭和19年）3月20日：佐世保警備隊司令官兼佐世保海兵団長
1945年（昭和20年）1月20日：第4海上護衛隊司令官兼沖縄方面根拠地司令官
1945年（昭和20年）2月25日：沖縄方面根拠地隊司令官
1945年（昭和20年）6月13日：戦死 享年54 海軍中将に特別進級
1968年（昭和43年）3月30日：戦没者叙勲により（勲二等）旭日重光章へ追陞。

家族

11人の子供がおり、長男の大田英雄は社会科教師で平和運動家。三男の落合畯一は自衛隊ペルシャ湾派遣の際の指揮官。四男の大田豊も海軍軍人。三女の板垣愛子はパーフェクト リバティー教団|パーフェクト_リバティー教団の教校長です。

辞世の句

「大君の御はたのもとに死してこそ 人と生まれし甲斐ぞありけり」

備考

大田實が発信した海軍次官宛の電報については、いくつかの見解があります。一つは、この電報が沖縄県知事の島田叡が作成したものを、大田が転電したのではないかという説です。また、電報の文面については、当時の状況から不明瞭な部分があるため、複数のバージョンが存在しています。

大田が自決した海軍司令部壕跡は、現在海軍壕公園として整備されています。

関連文献

戦史叢書・第49巻 南東方面海軍作戦 (1)（防衛庁防衛研究所戦史部・朝雲新聞社）
戦史叢書・第17巻 沖縄方面海軍作戦（防衛庁防衛研究所戦史部・朝雲新聞社）
沖縄県民斯ク戦ヘリ 大田實海軍中将一家の昭和史（田村洋三著・講談社）
高松宮日記（細川護貞・阿川弘之・大井 篤・豊田隈雄編・中央公論新社）
高木惣吉日記と情報（みすず書房）
日本陸海軍の制度・組織・人事（日本近代史料研究会編・東京大学出版会）
海軍兵学校沿革・第2巻（海軍兵学校刊）
海軍兵学校出身者名簿（小野崎誠編・海軍兵学校出身者名簿作成委員会）
父は沖縄で死んだ（大田英雄著＝長男・高文研）
海軍名語録（吉田俊雄著・文春文庫）
沖縄の絆・父中将から息子へのバトン―大田實と落合畯（三根明日香著・かや書房）
Lacey, Laura Homan (2005). Stay Off The Skyline: The Sixth Marine Division on Okinawa—An Oral History. Potomac Books.

関連項目

沖縄戦
島田叡
自殺・自決・自害した日本の著名人物一覧

外部リンク

大田実とは - コトバンク
沖縄戦関係資料閲覧室
* 旧海軍司令部壕（観光情報）

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