大矢敏行

大矢敏行は、日本の教育者であり、アニメーション・マンガ分野の専門教育機関として知られる学校法人大矢学園、およびかつての株式会社代々木ライブアニメイションの創立者です。

1937年、茨城県に生まれた大矢は、茨城県立水戸第一高等学校を経て千葉大学工学部映像科で学びました。大学卒業後の1959年、東映に入社。ここでは映画監督の深作欣二に師事し、実写映画や合作アニメーションの制作に携わるなど、映像クリエイターとしてのキャリアをスタートさせました。彼の映像に対する知識と経験は、後の教育活動の基盤となります。

1970年、大矢はアニメーションの通信教育を手がける民話社を設立し、独立の道を歩み始めました。しかし、この最初の事業はうまくいかず、1974年には倒産という厳しい現実に直面します。

一度の挫折を経験した後も、教育への情熱は失われることなく、1977年には株式会社代々木ライブアニメーションを新たに設立。同社の下で、代々木マンガ教室（現在の代々木アニメーション学院）を開設しました。この学院は、アニメーターやマンガ家、声優といったクリエイターの育成に特化した専門教育機関として、他に先駆ける存在となりました。

代々木アニメーション学院は順調に規模を拡大し、多くの卒業生がアニメ・マンガ業界で活躍するようになります。その教育実績と知名度から、学院は一時は業界最大手の専門校としての地位を確立しました。1996年には、専修学校マルチメディアアート学園も開設するなど、事業を多角化していきます。

しかし、事業の拡大に伴い、経営にも陰りが見え始めます。多額の広告宣伝費に加え、アニメ・マンガ分野の専門学校が乱立したことによる入学者数の減少が重なり、資金繰りが悪化しました。そして、2006年12月には、経営悪化を理由に民事再生法の適用を申請する事態に至ります。この時期を同じくして、大矢は株式会社代々木ライブアニメイションの代表取締役を引責辞任しました。

クリエイターとしては、『海底少年マリン』などのテレビアニメで脚本、絵コンテ、演出を手がけたほか、オランダ合作アニメ『ほら男爵の冒険』では作画・演出を担当。また、民話社時代には『しあわせの王子』や『かぐや姫』といったアニメ作品の企画・演出にも携わっています。実写映画分野でも、教育映画を中心に多数の作品で撮影を務めました。

教育者としては、代々木アニメーション学院で使用されたテキストの著作も多く手がけています。主なものに、『アニメ&コミックのための自然現象創画』『アニメ&コミックのための人間創画』『アニメ&コミックのための絵コンテ作法』などがあり、自らの経験と知識を活かした後進育成に力を注いでいました。

大矢敏行は、映像制作の世界から教育事業へと転身し、日本のアニメ・マンガ業界を支える多くの人材を育成した功績を持つ一方で、事業運営における波乱を経験した人物として記憶されています。教育者としての情熱と、事業家としてのチャレンジ精神が、彼のキャリアを通じて見られます。

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