大石遺跡 (大分県)

大石遺跡：縄文晩期の集落と農耕の痕跡

大石遺跡は、大分県豊後大野市緒方町大石に位置する、縄文時代晩期の遺跡です。大野川の支流である十角川沿いの台地上にあり、かつて集落が営まれていたことを物語ります。

発掘調査の概要

1962年から1966年にかけて、別府大学などによって4次にわたる発掘調査が実施されました。著名な文化人類学者である石田英一郎や泉靖一も調査に参加し、学術的な関心の高さがうかがえます。

検出された遺構と遺物

発掘調査では、集会などに使用されたと推測される大規模な建物跡や、複数の住居跡が検出されました。これらの遺構は、当時の人々の生活様式や社会構造を知る上で貴重な手がかりとなります。

また、多数の石器や黒色磨研土器が出土しました。石器の中でも打製石斧が過半数を占めるほか、横刃型石器なども見つかっています。これらの石器は、縄文時代の農耕を考察する上で重要な意味を持ちます。

縄文晩期農耕論との関連

縄文時代晩期には、ヒエやアワなどの雑穀が焼畑農業のような方法で栽培されていたとする「縄文晩期農耕論」があります。この立場からは、出土した打製石斧は耕具、横刃型石器は収穫具であると推定されています。

大石遺跡から出土した石器は、初期の農耕の存在を示唆するものとして注目されました。しかし、農耕を実証するような植物の種子などは確認されていません。小さな凹痕の付いた土器が出土し、植物の種子による圧痕であるとの推測もなされましたが、決定的な証拠は見つかっていません。

遺跡の意義

大石遺跡は、縄文時代晩期の集落の様子を知ることができる貴重な遺跡です。出土した遺構や遺物は、当時の人々の生活、文化、そして農耕の可能性について考察するための重要な資料となります。今後の研究によって、縄文時代の農耕文化がさらに解明されることが期待されます。

大分歴史事典 大石遺跡（おおいしいせき）:本遺跡の発掘調査に関わった別府大学の賀川光夫教授が執筆しています。

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