大神 (ゲーム)

大神：水墨画の世界観と奥深いストーリーが織りなす和風アクションアドベンチャー

2006年、カプコンよりPlayStation 2向けに発売された『大神』（おおかみ）は、クローバースタジオが開発を手掛けた和風アクションアドベンチャーゲームです。キャッチコピーは「この世の命が、蘇る」。

水墨画のような美しいグラフィックと奥深い世界観

本作最大の特徴は、水墨画を思わせる独特の筆致で描かれた、美しい日本画風の3DCGです。古代日本を思わせる風景や、個性豊かなキャラクターたちが、プレイヤーを幻想的な世界へと誘います。ディレクターは神谷英樹氏、キャラクターデザインは吉村健一郎氏、モーションデザインは山口孝明氏、背景デザインは片貝直紀氏といった豪華なスタッフ陣によって生み出された、美しい世界観が魅力です。地名や人名には、神谷氏の出身地である信州の地名が多く用いられています。

ストーリー：天照大神と小さな絵師の冒険

ストーリーは、百年前、英雄イザナギによって封印された怪物ヤマタノオロチの復活から始まります。オロチの復活によって、世界は闇に覆われ、人々は石像と化し、妖怪が蔓延るようになってしまいます。そんな中、木精サクヤ姫の力によって、天照大神アマテラスが白狼の姿で復活します。アマテラスは、小さな絵師イッスンと共に、ヤマタノオロチを倒し、世界を救う冒険へと旅立ちます。

旅の途中で、アマテラスはイザナギの子孫を名乗る大剣士スサノオや、謎の陰陽師ウシワカ、尼僧ツヅラオ、女王ヒミコなど、個性豊かなキャラクターたちと出会います。彼らはアマテラスの旅を助けるも、同時に様々な試練や謎を突きつけます。

物語は、神州平原、花咲谷、クサナギ村、笹部郷、両島原、西安京、そして極寒の地カムイへと舞台を移しながら、壮大なスケールで展開していきます。各地域には独自の文化や風習があり、そこに住む人々のドラマも丁寧に描かれています。

最終的には、箱舟ヤマトに乗り込み、暗黒の君主「常闇ノ皇」との戦いに挑むこととなります。常闇ノ皇を倒すため、アマテラスは人々の信仰心を取り戻し、失われた力を再び取り戻す必要があります。

システム：独特の「筆しらべ」システム

本作には、独特のゲームシステム「筆しらべ」が搭載されています。特定の模様を描くことで、アマテラスは様々な能力を発動できます。攻撃、回復、謎解きなど、幅広い用途に使用でき、ゲームプレイに深みを与えています。

また、三種の神器である鏡、勾玉、剣も重要な役割を果たします。それぞれ異なる攻撃方法があり、状況に応じて使い分ける戦略性も求められます。

高い評価と商業的な成功

『大神』は、その美しいグラフィック、奥深いストーリー、そして独特のゲームシステムによって、高い評価を獲得しました。平成18年度文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞、2007年度日本ゲーム大賞優秀賞など数々の賞を受賞し、IGNの「The Best of 2006」ではOverall Game of the Year（最優秀賞）を獲得するなど、国内外で高い評価を得ています。

しかし、売上本数は2009年3月時点で全世界で60万本と伸び悩んだことから、「最も商業的に成功しなかったGOTY受賞作品」としてギネス世界記録に認定されるという皮肉な一面も持ち合わせています。その後、2018年10月5日には「動物キャラクターが主人公の最も評価の高いゲーム」として、二度目のギネス世界記録に認定されました。

移植版と関連商品

PS2版の成功後、『大神』はWii、PS3（絶景版）、PS4、Xbox One、Nintendo Switch、PCへと移植・リマスターされました。それぞれのプラットフォームに合わせて最適化が施され、より多くのプレイヤーが『大神』の世界を楽しむことができるようになりました。

また、公式ガイドブック、攻略本、設定画集、サウンドトラック、コミックアンソロジーなど、多くの関連商品も発売されています。

まとめ

『大神』は、美しいグラフィックと奥深いストーリー、そして独自のゲームシステムが三位一体となった、傑作和風アクションアドベンチャーゲームです。高い評価を受けながらも、商業的な成功とは無縁だったという皮肉な歴史を持つ本作ですが、その魅力は現在も色あせることなく、多くのファンを魅了し続けています。

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