大統領令9066号

大統領令9066号：日系人強制収容の悲劇

大統領令9066号は、1942年2月19日にフランクリン・ルーズベルト大統領によって署名された、第二次世界大戦中のアメリカ合衆国における重要な大統領令です。この命令は、特定地域を軍管理地域に指定する権限を陸軍長官に与え、結果として日系人の強制収容へと繋がりました。この出来事は、アメリカの歴史における暗い一面として、今日まで語り継がれています。

第二次世界大戦前夜

1880年代から始まった日本からのアメリカへの移民は、様々な制限や差別を受けながらも、1924年の排日移民法制定まで続けられました。これらの日系移民は、主にハワイと西海岸に居住していました。しかし、第二次世界大戦の勃発によって、彼らの生活は一変することになります。

大統領令9066号の発令

1941年12月7日（アメリカ時間）の真珠湾攻撃をきっかけに、アメリカと日本は交戦状態に入りました。この状況下で、諜報活動の阻止や軍事活動への妨害を名目として、1942年2月19日に大統領令9066号が発令されました。この大統領令は、陸軍長官に特定地域を軍管理地域に指定する権限を与え、必要と判断されれば、人種や国籍に関わらず、その地域から住民を立ち退かせることが可能となりました。この結果、西海岸が軍管理地域に指定され、「敵性外国人」とみなされた日系人が立ち退きの対象となったのです。

強制収容の開始

1942年3月2日の軍管理地域指定に伴い、西海岸に住む日系人の立ち退きが求められました。しかし、その手続きは遅々として進まず、3月29日から強制収容が開始されることになりました。戦争中、約12万人の日系人が強制収容所に収容され、そのうち62％がアメリカの市民権を持つ二世や三世であり、残りが一世でした。この強制収容は、日系人コミュニティに壊滅的な打撃を与えました。また、ハワイでは人口の37%を占める日系人がいたものの、危険と判断された人物のみが収容されました。

他の人々への影響

この強制収容は日系人だけでなく、ドイツ系やイタリア系アメリカ人も対象となりました。ドイツ系アメリカ人は約11,000人、イタリア系アメリカ人は約3,000人が収容されました。この中には、ドイツから亡命してきたユダヤ人も含まれていました。これらの収容者の一部は短期間で釈放されましたが、多くは終戦まで収容所に留め置かれました。

強制収容への異議

FBI長官のジョン・エドガー・フーヴァーは、大統領令9066号に反対しました。しかし、それは憲法上の問題からではなく、スパイ容疑者は既に拘束済みだと考えたためでした。また、エレノア・ルーズベルト大統領夫人もこの大統領令に反対し、夫に何度も訴えましたが、署名を思いとどまらせることはできませんでした。

裁判闘争

収容された日系人たちは、大統領令9066号の適法性を問う裁判を起こしました。1944年12月18日、コレマツ対アメリカ合衆国事件において、大統領令による立ち退きは合法であると判断されましたが、同時にアメリカに忠誠を誓う日系人の強制収容は認められないとされました。この判決の前日には、1945年1月2日をもって強制立ち退きが解除されることが発表されました。

戦後の動き

大統領令9066号は、1976年2月19日にジェラルド・R・フォード大統領によって廃止されました。その後、1980年にはジミー・カーター大統領が戦時における民間人の転住・抑留に関する委員会(CWRIC)を設置する法案に署名し、大統領令9066号が日系人に与えた影響を調査しました。

公式な謝罪と補償

1982年12月、CWRICは調査報告書『拒否された個人の正義』を発表し、日系人の監禁は軍事的な必要性によるものではなかったと結論づけました。報告書は、監禁の決定が人種的偏見、戦時ヒステリー、政治指導力の誤った発露によるものであったと断定しました。委員会は、連邦政府による公式な謝罪と、生存者への2万ドルの賠償を勧告しました。

1988年8月10日、ロナルド・レーガン大統領が市民の自由法に署名し、1990年から賠償金の支払いが開始され、同時に謝罪の書簡が送られました。これらの動きは、歴史的な過ちを認め、二度と繰り返さないための重要な一歩となりました。

教訓

大統領令9066号とその後の日系人強制収容事件は、アメリカの歴史における人種差別と戦時ヒステリーの深刻な教訓として、語り継がれるべき出来事です。この出来事を記憶し、二度と繰り返さないための努力が、今も求められています。

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