大脱獄 (1975年の映画)

映画『大脱獄』の概要

『大脱獄』（だいだつごく）は、1975年4月5日に東映系で公開された日本の映画です。本作は主演に高倉健、監督に石井輝男を迎え、脱獄した死刑囚の物語を描いています。ストーリーは、単なる刑務所映画ではなく、バディものとしての要素が強い強盗映画としても評価されています。また、同名の1970年の映画『There Was a Crooked Man...』とは別作品です。

物語のあらすじ

物語は、銀行強盗を行ったチンピラの梢一郎が、仲間の剛田に裏切られ、守衛を殺した罪を着せられるところから始まります。死刑判決を受けた梢は、網走刑務所に送られ、そこで他の死刑囚と共に脱獄を試みます。しかし、その逃亡劇の中で、仲間たちは次々と命を落としていきます。梢と国岩邦造の二人だけが生き残り、逃走を続けます。

逃げる途中で梢は、病気で行き倒れていた女性・あきを助け、夫婦のふりをして宿に泊まります。彼は雪かきの仕事をして金を稼ぎますが、賃金を搾取しようとする親方に気づかれ、梢の正体が知れる危機に。その後、彼は親方たちを殺して金を奪い、あきに別れ金を渡します。

その後、梢は剛田のアリバイを偽証した愛人・時子の家を襲い、剛田の居所を探し求めます。しかし、列車の中で国岩と再会し、彼は金を狙って梢の後を追ってきたことが明らかになります。列車には、松井田という悪党が運ぶ2億円のボーナスがあり、剛田たちがその金を強奪しようと企んでいます。梢は国岩を次々と射殺しながら、最終的には松井田への復讐を果たそうとしますが、彼は銃撃を受けて命が尽きかけます。

物語の終盤で、梢は函館に戻り、脱獄劇の結果に思いを馳せますが、あきや仲間たちは別の地へと旅立ち、彼の最後は誰にも見届けられずに終わります。

キャストと制作背景

本作のキャストには、高倉健をはじめ、菅原文太や渡哲也が登場予定でしたが、渡は自身の病気の影響で降板しました。台本は、石井輝男が手掛け、彼の過去の作品に影響を受けています。製作は当初、高倉と渡の共演を想定していたものの、体調の問題により変更された経緯があります。

『大脱獄』のリリース前後は、映画界にとても多くの影響を与えました。特に、東映の制作方針において渡の降板が大きなニュースとなり、この作品の興行成績は期待されていたにもかかわらず、振るわなかったことが記録されています。東映はその後、他の映画を急ピッチで生産する必要があり、俳優たちとの間にスケジュール問題が発生しました。

印象と評価

非常にドラマチックな要素を持つ『大脱獄』は、高倉健の演技が光り、彼のキャリアにおいても特に重要な作品とされています。梢の逃避行とその中での人間ドラマは、観る者に深い印象を与え、死や裏切り、友情といったテーマに多くの人が共鳴しました。しかし、興行成績がふるわなかったため、高倉健自身の今後のキャリアを左右する作品としても位置づけられています。

本作は、ストリッパー役を木の実ナナが演じるなど、意外なキャスティングと話題性を持ちながらも、映画全体の出来と商業的な成功の間には乖離があったことが評価に影を落としました。最終的には、この作品が映画界に与えた影響と、それに続く作品たちの制作における教訓も多く見受けられます。

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