大自然の魔獣バギ

大自然の魔獣バギ

『大自然の魔獣バギ』は、1984年の8月19日に日本テレビ系列で放送されたアニメで、手塚治虫の独自の視点が反映された作品です。このアニメは、遺伝子組み換えという21世紀の社会問題を早くもテーマにしており、手塚の先見の明を感じさせます。放送は『24時間テレビ 愛は地球を救う7』の中で行われ、手塚プロダクションとの共同制作によって実現されました。

概要

アニメには、主人公リョウが遺伝子操作で生まれた魔獣、バギを退治する姿が描かれています。ストーリーは、リョウが悪魔に取り憑かれた獣との対峙に向かう様子と、彼の過去を振り返る形で進行し、映画『真昼の決闘』のように放送時刻とアニメ内の時間が見事に同調しています。リョウが魔獣に遭遇する11時40分までの1時間半の間に、彼の語りを通して物語の背景が次々と明らかにされていきます。

放送が迫る中でも制作は続けられ、結果的に未完成に近い状態での放送となりましたが、その後、手直しが施された完全版が作成されています。原作は『大地の顔役バギ』でありながら、アニメ版のバギは全く異なるキャラクターとして描かれています。

ストーリー

物語の舞台は、モニカ共和国の遥か彼方。主人公である日本人ガンマンのリョウは、魔獣バギを退治するため、少年チコの案内で彼が出現する場所を目指します。リョウは、自身の両親が忙しいため孤独な幼少期を過ごし、暴走族に加わったことがきっかけで、かつて育てた子猫のバギと再会します。バギは、カリスマ的な姿を持った女性で、リョウは彼女との過去について語ることになります。

リョウは母親の職場である「超生命センター」へ忍び込み、そこでバギの出生の秘密を探ります。彼女は実は遺伝子操作を受けたアメリカライオンであり、その母親によって生み出された実験体であることが判明します。しかし、9年前の地震で逃げ出してしまいました。所長はバギを排除しようとしますが、バギは催眠術で所長を操り、リョウと共に母親のいる研究所へ向かう手筈を整えます。

様々な困難を経て、リョウとバギはクカラチア研究所に到着。しかし、リョウは母親と意見が食い違い、軟禁されることとなり、バギも強力な接着剤で拘束されてしまいます。リョウの母親は、遺伝子組み換えで開発した強力な毒性を持つ米を作っていました。大統領はこの米を反政府勢力に渡そうとし、母親は大統領による殺害を恐れ、バギに毒性米を運ぶよう指示した後、逃がします。

リョウは母親の死を悲しみ、仇を討つ誓いを立ててセメン・ボンドに弟子入りします。5年後、リョウのもとにバギを仕留める依頼が舞い込み、リョウはチコの協力を得て、バギ追跡を始めます。リョウとチコはバギの出現を目撃し、次第に彼の正体が明らかになっていきます。

最終的に、リョウは母親のペンダントの中に隠された手紙から真実を知り、泣き崩れます。しかし、バギの死が示唆されながらも、彼女が生きている可能性も残されています。物語は、リョウが未だにバギを心に抱き続け、未来へと続く希望を感じさせる形で締めくくられています。

キャストとスタッフ

バギの声を担当したのは島津冴子、リョウを井上和彦が演じました。手塚治虫がこれを原案にし、企画や演出を手掛けました。音楽は羽田健太郎が担当し、視覚的にも聴覚的にも魅力的な作品となっています。手塚治虫の意思が色濃く反映されたこのアニメは、単にエンターテインメントに留まらず、深いメッセージを含んでいます。

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