大蔵省 (イギリス)

HMトレジャリー（英国財務省）

HMトレジャリー、正式には英国王陛下の大蔵省（His Majesty's Treasury）は、イギリス政府の中核を成す行政機関であり、主に公共の財政政策や経済政策の策定および実行を担当しています。この省は、香港ニュースの「トレジャリー」としても広く知られ、社会全体の経済の健全性を維持する重要な役割を果たしています。

歴史的背景

HMトレジャリーの起源は、国王の財産を管理するための宮廷内の組織に遡ります。イングランドおよびイギリスにおける財務府（エクスチェッカー）から分離されたのは、エリザベス1世治世期のこと。最初は王室の財産を扱う小規模な組織でしたが、時を経るにつれてその規模は拡大し、17世紀には国家財政を担当する官庁へと発展しました。18世紀の初めには、大蔵卿が廃止され、新たに大蔵卿委員会が設立されました。そして、第一大蔵卿がHMトレジャリーの責任者となると、以降の実質的な首相がこの役割を担うようになりました。

特にロバート・ウォルポール以後、第一大蔵卿および財務大臣がHMトレジャリーの中で重要な役割を果たすようになり、財務府の機能がこの省に集約されることとなります。1834年、チャールズ・グレイ内閣の下で財務府は正式に廃止され、国家の財務機能がHMトレジャリーに統合されました。

財務府とその役割

HMトレジャリーの前身である財務府（エクスチェッカー）は、12世紀から近世にかけてイングランドの国家財政および関連する訴訟を扱っていました。名の由来は、帳簿の記録に用いられたチェスの盤面に似た模様のカウンターに基づいています。ヘンリー1世の時代に設立され、初めて大法官がその責任者となりましたが、後に職務の複雑化により、財務大臣がその役割を引き継ぎました。16世紀から権限が徐々に縮小され、最終的にはHMトレジャリーによってその機能が引き継がれました。

1820年代のウィリアム・ピットの財政改革は、財務府が名目上の役割しか持たなくなる要因となり、1834年には正式に廃止されます。当時の英国の財務大臣の称号は、今もなお「チャンセラー・オブ・エクスチェッカー」であり、その歴史的な流れを反映しています。

現代におけるHMトレジャリーの役割

今日、HMトレジャリーは公共財政政策を策定し、政府の支出を詳しく管理しています。中央会計報告オンライン・システム「OSCAR」を通じて、政府全体の予算を透明に示す仕組みが整っており、省の支出を複数の分類ヘッダーの下に整理することが求められています。これに基づいて、全政府会計（WGA）の年次財務諸表が作成され、国民に対して透明性のある報告が行われています。

訳語と地域的な違い

近年、HMトレジャリーの訳語として「財務省」が用いられており、それが日本の内閣府や各種の行政機関でも普及しています。日本の大蔵省が2001年に「財務省」に改称される前は、HMトレジャリーに対し「大蔵省」という訳語が usarれていました。時代や状況によって異なり得る訳語の変遷は、HMトレジャリーと日本の財務機関との関係を物語っています。

このように、HMトレジャリーはイギリスの経済政策の重要な柱であり、その機能や歴史は今なお国の財政運営に不可欠な要素といえるでしょう。

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