大藏律子

大藏 律子（おおくら りつこ）

日本の政治家、市民活動家。旧姓は中釜。1939年（昭和14年）4月19日、鹿児島県川辺郡万世町小湊（現在の南さつま市加世田小湊）に生まれる。

生い立ちと学歴

地元の万世町立小湊小学校、加世田市立小湊中学校（後に加世田市立万世中学校と統合され、現在の南さつま市立万世中学校）で学び、鹿児島県立加世田高等学校に進学。高校卒業後、1958年（昭和33年）に鹿児島大学文理学部理学科（現在の理学部）に入学。大学2年次の秋からは化学科の専門課程で学び、1962年（昭和37年）に同学部を卒業した。

初期キャリアと市民活動

大学卒業後、栗田工業株式会社に入社。横浜市に所在する中央総合研究所に配属され、技術者として勤務する傍ら、入社翌年の春頃から労働組合活動にも積極的に関わった。その後、結婚を機に同社を退職。1967年（昭和42年）3月、神奈川県平塚市へ転居した。

平塚市に移住後は、地域に根差した市民活動に力を注ぐようになる。消費者の会などの設立に携わり、生活協同組合の活動においても中心的な役割を果たした。県内の5つの生協が合併する際には理事を務め、合併後は監事として組織の運営に貢献した。また、平和運動にも熱心に取り組み、「核廃絶平和都市宣言」の実現に向けた運動を主導。この活動が実を結び、1985年（昭和60年）12月20日には平塚市が正式に核兵器廃絶平和都市を宣言するに至った。

政治家としての経歴

長年の市民活動の実績と、市政に対する提言活動を経て、1987年（昭和62年）4月、平塚市議会議員選挙に立候補し、初当選を果たした。市議会議員としては、市民の声を行政に届け、地道な政策提言活動を続けた。その後も順調に当選を重ね、1999年（平成11年）には4期目の当選を果たし、市政における確固たる地位を築いた。

市議会議員として一定の役割を終え、一度は政界からの引退を考えていたが、当時の市政課題に対し、市民団体からの強い要請を受ける形で、2003年（平成15年）4月27日に行われた平塚市長選挙への立候補を決意した。この選挙では、「湘南市」構想を推進していた現職の吉野稜威雄候補との一騎打ちとなり、合併反対の立場から市民の支持を集め、これを制して初当選を果たした。同年4月30日、平塚市長に就任した。

平塚市長としての活動

市長就任後、市民参加の推進や地域の福祉・教育の充実を目指し、様々な施策を推進した。特に、自治基本条例の制定は、市民と行政とのパートナーシップを強化し、開かれた市政運営を進めるための重要な取り組みであった。また、地域に密着した福祉サービス提供を目指す町内福祉村の拡充や、子どもの読書推進を目的としたブックスタート事業、学校図書館の質的向上を図るための学校司書の配置など、多岐にわたる分野で市民生活の質の向上に尽力した。

2007年（平成19年）の市長選挙では、自民党代議士の河野太郎氏の支援を受けた元読売新聞記者の相原清候補や、元市議の真敏昭候補らを相手に再選を果たし、市政運営の手腕に対する市民の信任を得た。2期目の任期中も、引き続き市民との対話を重視し、協働によるまちづくりを進めた。

退任とその後

2期目の任期満了が近づいた2011年（平成23年）の市長選挙には立候補せず、勇退することを表明した。同年4月28日に行われた退任式において、市長就任時の公約の一つであった市長給与の5割削減については、条例化が実現できなかったことを説明しつつ、その代わりとして、削減目標額に相当する1,480万円余りを市に寄付したことを表明した。

市長退任後も、自身の経験や考えをまとめた著書『凛として－協働の記録 平塚から』を2018年（平成30年）に刊行するなど、様々な形で地域や社会への関わりを続けている。

著書

* 大藏律子『凛として－協働の記録 平塚から』神奈川新聞社、2018年1月11日。ISBN 978-4876455751。

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