大越勝秋

大越勝秋：歴史と民俗を繋ぐ研究者

大越勝秋（1911-1984）は、日本の歴史と民俗学に重要な足跡を残した研究者です。福島県に生まれた彼は、教育者としてのキャリアを通じて、歴史研究と民俗学研究の両面で顕著な業績を挙げました。

彼の学問的旅路は、1936年の立正大学専門部入学から始まります。同大学を卒業後、東京高等師範学校研究科に進み、1941年に研究科を修了。同年、大阪府立岸和田中学校（後の大阪府立岸和田高等学校）に教員として着任しました。長年にわたる高校教員生活の中で、大越氏は生徒たちの課外活動、特にクラブ活動に深く関わり指導にあたりました。この活動が、彼自身の研究テーマへと繋がっていくことになります。

岸和田高校での勤務期間中、大越氏は生徒指導を通して、地域社会の伝統や文化、特に宮座や民謡といった民俗芸能に強い関心を抱くようになりました。この関心は、単なる指導を超え、彼自身の本格的な研究へと発展していきます。彼は、長年の経験と鋭い観察眼を活かし、宮座や民謡に関する綿密な調査・研究を進め、貴重な知見を蓄積しました。

1971年に岸和田高校を退職した大越氏は、阪南大学教授として新たなキャリアをスタートさせます。1981年まで同大学で教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。大学教授としての立場も活かし、歴史研究、特に大阪府域における条里制坪名に関する調査研究にも精力的に取り組みました。条里制坪名は、古代日本の土地制度を知る上で貴重な史料であり、大越氏の研究は、この分野における重要な貢献となりました。

大越氏の研究は、地域社会の伝統文化の保存と継承に大きく貢献しました。生徒指導から始まった民俗芸能研究は、彼自身の学問的探究心と教育者としての熱意が一体となった、かけがえのない成果と言えます。また、大阪府域の条里制坪名調査は、歴史研究に新たな知見をもたらしました。

大越勝秋は、歴史家、民俗学者として、教育者として、多方面で活躍した稀有な人物でした。彼の残した研究成果は、現在もなお、歴史研究や民俗学研究に大きな影響を与え続けています。彼の功績は、単なる学問的業績にとどまらず、地域社会の伝統文化の継承、そして後進育成という、より広い意味での貢献と言えるでしょう。彼の生涯と業績は、後世に語り継がれるに値するものです。

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