大逆罪 (イギリス)

大逆罪（high treason）とは

イギリス法における大逆罪は、国王に対する深刻な背信行為を含む犯罪です。この犯罪は、特に重い罪とされ、国の安全や安定を脅かす行為として取扱われます。今回の記事では、大逆罪の歴史や具体的内容、その罰則について詳しく解説します。

大逆罪の歴史的背景

大逆罪という概念は、中世のイングランド法にさかのぼり、1351年にエドワード3世によって制定された1351年反逆法で初めて成文化されました。この法律では、当初7つの具体的な行為が大逆罪として定義され、特に国王やその家族に対する攻撃や、国王に敵対する行動が含まれました。

大逆罪の内容

1351年に定められた大逆罪の具体例は次の通りです。
1. 国王、王妃、または国王の長男の死を企むこと。
2. 王妃や国王の長男の妻、未婚の王女を汚す行為。
3. 国王に対して国内で戦争を起こすこと。
4. 国王の敵に対し便宜を図ること。
5. 王璽や貨幣を偽造する行為。
6. 偽金を持ち込むこと。
7. 官吏や裁判官を殺害すること。

これらの行為は、国家の根幹を揺るがす重大な犯罪とされ、非常に重い罪としての扱いを受けました。

大逆罪の適用範囲の拡大

以降、この法律の適用範囲は拡大され、1495年にはアイルランドに、1708年にはスコットランドにも適用されるようになりました。これにより、イギリス全土で大逆罪が適用されることになりました。

刑罰の変遷

かつて大逆罪に対して科せられた刑罰は、非常に厳しいものでした。特に「首吊り・内臓抉り・四つ裂きの刑」は、死刑の中で最も重いものでしたが、1790年にその刑が廃止され、その後は斬首刑または絞首刑が一般的な刑罰となりました。

最後の大逆罪による死刑は、第二次世界大戦中にドイツからイギリスに向けてプロパガンダを流していたウィリアム・ジョイスによって行われ、彼は1946年に絞首刑にされました。

現在の法律と刑罰

現行の1351年反逆法は2019年現在でも有効ですが、1973年には斬首刑が廃止され、絞首刑のみが残りました。ただし、最後の斬首刑は1817年に実施され、民衆蜂起を促したジェレマイア・ブランドレスが対象でした。1998年には絞首刑も廃止され、現在では大逆罪に対する最高刑は終身刑となっています。

このように、大逆罪はイギリス法の中で非常に特異な地位を占めており、その扱いは時代と共に変化してきました。国への背信行為について考える際に、大逆罪の歴史を知ることは重要です。

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