大里俊晴

大里 俊晴（おおさと としはる）について

大里俊晴（1958年2月5日 - 2009年11月17日）は日本の現代音楽における重要な研究者であり、横浜国立大学教育人間科学部の教授として知られています。新潟県で生まれた彼は、早稲田大学文学部でフランス文学を学ぶ一方で、音楽活動にも精力的に取り組んでいました。特にロックバンド「ガセネタ」や「タコ」に参加し、山崎春美と共に演奏活動を行っていました。

学業とパリでの留学

大学を卒業後、大里はパリ第8大学で修士課程および研究課程に進学し、ダニエル・シャルルの指導を受けました。このパリ留学は彼の音楽的キャリアにとって重要な時期となり、1987年から1993年までの期間、彼はパリで多くの知られざる音楽を体験し、見識を深めました。

帰国後は、『ユリイカ』などの媒体を通じて、現代音楽に関する評論活動を活発に行いました。その中でも、彼自身が創作・参加したノイズ系パフォーマンスも多く、リュク・フェラーリなどのフランスの前衛音楽家を日本に紹介することにも努めました。また、1992年に発表した小説『ガセネタの荒野』では、自身のバンド経験を元にしたストーリーを展開し、音楽と文学の縁をつなげる作品を残しました。

教育者としての活動

大里は評論活動が進む中で、早稲田大学やその後の横浜国立大学で非常勤講師を務め、1998年には同大学の教育人間科学部に助教授として採用されました。彼の授業は独創的であり、多彩なゲストを招いての共演など、型破りなアプローチが学生に人気を博しました。特に、同僚の梅本洋一や木下長宏と共に2000年に出版した『現代フランスを知るための36章』は、現代フランスの音楽や文化を理解するための貴重な教材となりました。

闘病とその後の影響

残念ながら、2006年には癌の診断を受け、彼の音楽活動にも影響を与えました。病気と闘う中で、2008年には故郷新潟で「間章に捧げる即興演奏」と題した演奏を行い、これが彼の最後のソロ演奏となりました。その後、2009年11月に、静脈瘤が破裂したことにより51歳で他界しました。大里が亡くなる直前には、「ガセネタは凄いバンドだった」などの感想を口にしたと言われています。

著作と音楽活動

彼の活動は書籍としても残されており、「ガセネタの荒野」（洋泉社、1992年）や「マイナー音楽のために」（月曜社、2010年）などがあります。2009年には、彼の評論を集めた著作集が出版されると共に、2011年には生前の唯一の単著書が復刊されました。

音楽活動においても、彼はCDやDVDに多くの音源を残しており、その作品群は彼の芸術的信念を示す重要な資料となっています。特に「間章に捧げる即興演奏」という作品は、彼の音楽表現の集大成とも言えるものです。

大里俊晴の作品や活動は、日本の現代音楽界において影響を与え続けており、彼の遺した足跡は今も多くの音楽ファンや研究者に尊ばれています。

もう一度検索