大阪市交通局10系電車

大阪市交通局10系電車：御堂筋線を支えた通勤形電車の歴史

大阪市交通局10系電車は、かつて大阪市営地下鉄を支えた通勤形電車です。1970年代から1980年代にかけて御堂筋線を中心に活躍し、その後VVVFインバータ制御への更新を経て、2020年代初頭に全車廃車となりました。本稿では、その歴史と技術的な特徴を詳細に解説します。

開発の経緯と試作車20系

10系電車の起源は、1973年に谷町線向けに製造された試作車20系（初代）4両にあります。この車両は、当時としては先進的な全電動車方式と回生制動機能付き電機子サイリスタ・チョッパ制御器を搭載していました。当初は谷町線での急行運転を目指した高速運転試験が計画されていましたが、電力課などの反対により頓挫しました。

しかし、チョッパ制御器による低発熱性という特徴が、当時深刻な問題となっていた御堂筋線のトンネル内温度上昇対策として注目を集めました。このため、20系は中間車4両を追加して8両編成に改造され、10系に改番の上、1974年に御堂筋線へ転用されました。1976年2月から営業運転を開始しましたが、チョッパ制御器特有の高調波ノイズ問題への対策として、しばらく走行試験が続けられました。

量産車の製造と冷房装置の搭載

御堂筋線の輸送力増強と新線開業に伴い、1979年から冷房装置を搭載した量産車の製造が始まりました。日本の地下鉄車両で初めて車両冷房を搭載した車両でもあり、これはチョッパ制御器の低発熱性があったからこそ実現した画期的な試みでした。1989年までに234両（9両編成26本）が製造され、御堂筋線全線と北大阪急行電鉄南北線への乗り入れを開始しました。

車両の設計と技術的特徴

10系電車は、30系電車のレイアウトを踏襲したアルミ合金製18m級両開き4扉車体を持つ車両です。屋根形状は30系と異なり、アルミ材押し出し技術の進歩により、すっきりとしたデザインとなりました。前面デザインは60系電車のデザインラインを取り入れた額縁スタイルを採用。初期の20系とは異なり、量産車では前照灯を左右に配置するなどデザインが変更されています。

台車は住友金属工業製のDS-10を採用。30系よりも乗り心地が向上しました。主制御器は1C8M方式で、主電動機は東芝SE-617Aを使用。チョッパ制御器は日立製作所と三菱電機がそれぞれ開発したものを搭載し、回生制動による電力回生も実現しています。集電靴はM1に2セット、M2に1セットを搭載し、き電区間の停電時の安全対策も施されました。ブレーキシステムはOEC-2を採用し、回生制動との電空同期機能を備えていました。

冷房装置は、量産車では三菱電機製CU-74/74Aや東芝製RPU6001/6001Aが搭載され、1986年以降の車両ではさらに薄型化されました。

編成変更とVVVFインバータ制御への更新

1995年から1996年にかけて、輸送力増強のため10両編成化が行われました。既存の編成を分割し、新造車両と組み合わせて10両編成を構成しました。

1998年から2011年にかけて、05編成から18編成を対象に更新工事が行われ、その過程でIGBT素子VVVFインバータ制御装置への更新も実施されました。これにより、10A系と呼ばれる車両が誕生しました。更新内容は、内外装の改良、冷房装置の性能向上、車内設備の充実など多岐に渡りました。

廃車と保存

30000系の導入により、2011年から10系の廃車が開始され、2022年に全車廃車となりました。1104編成の先頭部カットボディが緑木車両工場で保存されています。

まとめ

大阪市交通局10系電車は、技術革新を取り入れながら長年にわたり御堂筋線で活躍した車両です。その歴史は、大阪の地下鉄発展に大きく貢献しました。 現在では、その姿を見ることはできませんが、その功績は長く記憶に残るでしょう。

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