大阪市電南北線

大阪市電南北線は、かつて大阪市内を南北に縦断していた路面電車路線です。大阪駅前駅から恵美須町駅を結ぶ本線と、大阪駅前駅から大江橋を経由して渡辺橋駅に至る支線で構成されていました。この路線は、大阪の都市交通の発展に大きく貢献しましたが、時代の変化とともにその役割を終え、現在は全線が廃止されています。

路線概要

本線

起点: 日本橋筋三丁目駅
終点: 恵美須町駅
軌間: 1435mm
電化方式: 直流600V

支線

起点: 大阪駅前駅
終点: 大江橋信号所
軌間: 1435mm
電化方式: 直流600V

歴史

南北線の計画は、1904年3月の市会で東西線とともに提案されました。当初は梅田停車場前から天王寺停車場前を結ぶ広範な路線が検討されましたが、沿線住民の反対などにより、梅田停車場前から恵美須町二丁目、および大江橋南詰と渡辺橋南詰を結ぶ路線として建設されることになりました。

1906年12月に工事が開始され、1908年8月1日に梅田から湊町を経由して恵美須町に至る区間が開通しました。同年11月1日には渡辺橋から大江橋の間が開通。梅田から大江橋間は1910年12月28日に開通し、全線が開業しました。この路線は、大阪市電の歴史において、阪神電鉄との初の線路使用契約が結ばれた場所でもありました。しかし、この乗り入れは実現しませんでした。

南北線は、その後の大阪大空襲などの影響を受け、一部区間が休止や廃止となりました。特に、1945年3月の空襲で渡辺橋駅と大江橋駅間が被災し、1960年に廃止。1963年には肥後橋駅 - 日本橋筋三丁目駅間が廃止され、路線は南北に分断。同年には大阪駅前駅 - 肥後橋駅間も廃止されました。残った区間も、1966年に日本橋筋三丁目駅 - 恵美須町駅間と大阪駅前駅 - 大江橋信号所間が廃止され、全線が姿を消しました。

年表

1908年8月1日：梅田停車場前駅 - 恵美須町駅間が開業。
1908年11月1日：中之島二丁目駅を渡辺橋駅に改称。大江橋駅 - 渡辺橋駅間（支線）が開業。
1910年12月28日：梅田停車場前駅 - 大江橋駅間（支線）が延伸開業し、全線開業。
1912年5月1日：曽根崎新地駅を桜橋交叉点駅に、梅田新道駅を梅田新道交叉点駅に改称。堂島北町駅、堂島浜通駅を堂島中町駅に統合して廃止。
1912年頃：裏新町駅、西長堀南通駅を四ツ橋駅に統合して廃止。靱中通駅、北堀江通駅、西道頓堀通駅、難波元町駅、難波新川駅（初代）、難波河原町駅廃止。難波新川駅（2代）開業。
1912年 - 1913年：梅田新道交叉点駅を梅田新道駅に改称。
1912年 - 1915年：桜橋交叉点駅を桜橋駅に改称。
1913年7月2日：靱南通駅を信濃橋駅に改称。
1913年 - 1915年：東梅田町駅を阪神電車前駅に、梅田車庫前駅を箕有電車前駅に、江戸堀南通駅を江戸橋駅に改称。
1914年7月7日：難波新川駅（2代）を移設。
1915年以前：船大工町駅を蜆橋駅に改称。
1915年 - 1916年：北堀江通駅を御池橋駅として復活。南堀江上通駅を木綿橋駅に改称。
1916年 - 1917年頃：新町通駅を新町橋駅に改称。難波河原町駅を河原町駅として復活。
1918年2月4日：箕有電車前駅を阪急電車前駅に改称。
1922年8月16日：難波新川駅（2代）を賑橋駅（西詰）に改称。
1926年8月7日：梅田停車場前駅を大阪駅前駅に、土佐堀裏町駅を土佐堀船町駅に、湊町停車場前駅を湊町駅前駅に、難波停車場前駅を難波駅前駅に改称。
1927年：大江橋の散水車引き込み線を廃止。
1928年 - 1929年：靱中通駅復活。
1929年：大阪駅前駅 - 梅田貨物駅間に梅田貨物線を開業。
1936年6月15日：土佐堀船町駅を肥後橋駅に改称。
1939年3月21日：阪神電車前駅を阪神西口駅に、阪急電車前駅を阪急阪神前駅に改称。
1944年6月1日：急行運転の終日実施に伴い、複数の駅を廃止。
1945年3月14日：大阪大空襲により大江橋駅 - 渡辺橋駅間が休止。
1946年7月15日：日本橋筋四丁目駅復活。
1946年9月1日：立売堀南通駅復活。
1948年7月1日：堂島中町駅復活。
1949年3月20日：御池橋駅を北堀江通一丁目駅として復活。
1950年9月1日：賑橋駅（西詰）復活。
1950年頃：四ツ橋駅を四つ橋駅に表記変更。
1952年5月1日：江戸橋駅復活。
1954年9月5日：靱中通駅を靱公園前駅として復活。新町橋駅、日本橋筋五丁目駅復活。
1956年7月1日：立売堀南通駅を東立売堀駅に改称。
1960年10月10日：休止していた大江橋駅 - 渡辺橋駅間を廃止。
1963年5月12日：肥後橋駅 - 日本橋筋三丁目駅間を廃止。
1963年8月1日：大阪駅前駅 - 肥後橋駅間廃止。
1964年6月20日：大阪駅前駅（初代）が地下鉄工事のため廃止、阪急阪神前駅を移設のうえで大阪駅前駅（2代）に改称。
1966年4月1日：日本橋筋三丁目駅 - 恵美須町駅間廃止。
1966年7月1日：大阪駅前駅 - 大江橋信号所間（支線）が廃止され、全線廃止。

系統

開業当初は1号系統、2号系統、4号系統の３つの系統で運行されていました。その後、大阪市電の路線網拡大に伴い、運行系統は複雑化しました。

1917年2月改正時には、い号系統、ほ号系統、へ号系統、と号系統、ち号系統、り号系統、ぬ号系統、を号系統、わ号系統、か号系統、よ号系統など、多数の系統が存在しました。これらの系統は、市内各所を結ぶ役割を担っていました。

1957年11月1日時点では、1系統、3系統、4系統、6系統、10系統、11系統、13系統、15系統、22系統と整理され、より効率的な運行体制が敷かれていました。

脚注

詳細な駅一覧や系統については、参考文献を参照してください。

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳 - 全線・全駅・全廃線』 10 大阪、新潮社、2009年2月18日。
大阪市交通局『大阪市交通局七十五年史』大阪市交通局、1980年3月31日。
辰巳博著、福田静二編『JTBキャンブックス大阪市電が走った街今昔水の都の路面電車定点対比』（初版）JTB、2000年12月1日。

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