大阪電気軌道長谷線

長谷線の歴史と変遷

長谷線（はせせん）は、かつて存在した鉄道路線で、近畿日本鉄道（近鉄）の前身である大阪電気軌道（大軌）が所有していました。この路線は、長谷寺への参拝客を運ぶ目的で建設され、1909年12月11日に真言宗の古刹である長谷寺の近く、初瀬駅までの5.6kmの区間で開業しました。初瀬駅は、桜井線の桜井駅から分岐し、長谷寺にほど近い位置に設置されていました。

初瀬軌道から長谷鉄道へ

開業当初は「初瀬軌道」として知られていましたが、その後、1912年に「初瀬鉄道」、さらには大正時代に入ると「長谷鉄道」と名を変えました。これは、経営方針や路線の変化に伴うものでした。

大正時代には、近鉄の前身である大軌が新たな路線を建設する計画を立て、桜井駅から伊勢神宮へ向かう路線「参宮急行電鉄」が開業しました。この新たな路線は長谷線と平行して運行されるため、長谷鉄道は競争を避けるため、またその補償目的から、1928年に大軌に合併されました。これにより長谷線は大軌の路線となりました。

経営合理化の試み

1930年には経営効率を向上させるために、ガソリンカー（軌道自動車）を導入して蒸気動車を置き換えました。これにより、老朽化が進んでいた既存の列車の代替を図り、路線の存続を目指しました。しかし、その後の参急線の開業に加え、平行区間において乗合バスが運行を開始したため、長谷線の乗客数は急激に減少しました。

廃止とその後

経営の悪化は続き、1938年には長谷線は全線廃止され、その歴史に幕を下ろしました。これにより、長谷線は31年間の運行を終えたことになります。最後の運行時には、1日19往復の運行が行われ、全線の所要時間は14分という短いものではありましたが、利用者は減少の一途を辿っていました。

路線および駅のデータ

長谷線の路線データには、以下のような情報があります。

• - 路線距離：桜井 - 初瀬間5.6km
• - 軌間：1067mm
• - 駅数：停車場2、停留所5
• - 電化区間：なし
• - 複線区間：なし

接続路線としては桜井駅があり、この駅は鉄道省の桜井線や大阪電気軌道の桜井線、さらには参宮急行電鉄本線、大和鉄道線と接続しています。初瀬駅は現在、観光バス用の駐車場に転用されており、当時の姿を想像することはできません。

車両の変遷

長谷線開業時には、日本では珍しい蒸気動車が4両導入され、後には客車2両の増備も行われました。1918年からは貨物営業も開始し、貨物用の車両も増えていきました。1930年にはレカ1形というガソリンカーが導入され、運用されることとなりました。長谷線の廃止後、これらの車両の一部は他の鉄道会社へ譲渡されました。

長谷線の歴史は、鉄道の発展とともに歩んだ地域交通の一端であり、今も多くの人々に愛された参拝路線の名残を残しています。

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