大隅清治

大隅清治博士：鯨類研究のパイオニア

大隅清治博士（1930年7月12日-2019年11月2日）は、日本の水産動物研究者として、特に鯨類研究において世界的な権威として知られています。群馬県伊勢崎市に生まれ、東京大学農学部を卒業後、農学博士号を取得。その専門知識と経験を活かし、日本鯨類研究所や水産庁などで長年にわたり鯨の研究に尽力しました。

研究とキャリア

博士の研究は、鯨類の年齢査定法に関する研究から始まりました。学位論文『A study on age determination of the fin whale (ナガスクジラの年令査定法に関する研究)』は、その後の鯨類研究に大きな影響を与えました。

その後、博士は水産庁遠洋水産研究所長、日本鯨類研究所専務理事、そして理事長（1995年-2004年）を歴任。これらの要職において、鯨類研究の推進に大きく貢献しました。さらに、日本鯨類研究所顧問として、長年にわたる経験と知識を後進に伝えていきました。

持続可能な捕鯨の提唱

大隅博士は、捕鯨の在り方についても深い考察を重ねてきました。単なる商業目的の捕鯨には批判的であり、鯨の資源管理を前提とした持続可能な捕鯨を提唱しました。これは、鯨類の保護と捕鯨の両立を目指す、バランスのとれた考え方として注目を集めています。

多岐にわたる貢献

博士の功績は研究活動にとどまりません。一般向けに分かりやすい文章で書かれた著書『クジラの飲み水』は、中学1年生の国語教科書にも採用され、多くの人に鯨類への理解を深める機会を与えました。また、『クジラは昔 陸を歩いていた』や『クジラ 海を泳ぐ頭脳』など、数々の著書や論文を発表し、鯨類研究の発展に貢献しました。朝日新聞科学欄への連載「鯨物語」なども人気を博しました。

家族

大隅博士の妻は電子顕微鏡学者の大隅正子氏、長女は神経科学者の大隅典子氏です。学術界に貢献した著名な家族の背景も、博士の生涯を理解する上で重要な要素となっています。

受賞歴

博士の研究と社会への貢献は高く評価され、勲四等瑞宝章（2001年）、ノルウェー王国功労勲章（2006年）、日本哺乳類学会特別賞（2011年）など数々の賞を受賞しました。

急性心筋梗塞のため死去

2019年11月2日、急性心筋梗塞のため89歳で逝去されました。日本の鯨類研究における大きな損失であり、その功績は長く人々の記憶に刻まれることでしょう。大隅清治博士の残した業績は、未来の鯨類研究者たちにとって貴重な指針となるに違いありません。彼の研究と提唱した持続可能な捕鯨の考え方は、これからも私たちに重要な示唆を与え続けるでしょう。

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