大韓国民航空社

大韓国民航空社（KNA）とは

大韓国民航空社（Korean National Airlines、略称KNA）は、1946年に設立された、朝鮮半島および韓国初の民間航空会社です。創業者である慎鏞頊（シン・ヨンウク）の情熱と、激動の時代の中で、韓国の航空産業の黎明期を支えた重要な存在でした。

設立の経緯

KNAは、慎鏞頊によって設立されました。彼は、全羅北道高敞（コチャン）の裕福な家庭に生まれ、日本とアメリカで飛行機操縦を学んだ後、1929年に朝鮮飛行学校を設立し、パイロットの育成に尽力しました。慎鏞頊は、朝鮮での航空会社発展を夢見ており、1935年に朝鮮飛行学校を慎航空事業社と改称し、遊覧飛行や漁群探知飛行を開始しました。1936年には、京城（現在のソウル） - 裡里（現在の益山）間の定期運航を開始しました。

第二次世界大戦中、朝鮮航空事業社は、軍用機製造や兵士輸送に携わりましたが、終戦とともに事実上休業状態となりました。しかし、慎鏞頊は、戦後、アメリカ軍政府との交渉を経て、朝鮮航空事業社を存続させ、1946年3月1日に大韓国民航空社と改称しました。1948年には株式会社化し、同年10月30日に、ソウル - 釜山間に最初の旅客便を就航させました。この日を記念して、韓国では10月30日を「航空の日」としています。

経営悪化と終焉

KNAは、設立当初から困難に直面しました。1949年、慎鏞頊は、親日行為を疑われ逮捕されましたが、不起訴処分となりました。朝鮮戦争勃発により、機材を徴発され運航を停止せざるを得なくなりましたが、戦後に運航を再開し、国際線にも進出しました。しかし、政府の航空産業育成への関心の薄さや、財政支援の不足により、経営は常に不安定でした。

特に、KNAは日本路線やアメリカ路線開設を目指しましたが、当時の政治情勢や機材調達の難航により実現しませんでした。さらに、ウォン暴落やハイジャック事件による機体損失が重なり、経営は悪化の一途を辿りました。慎鏞頊は、政治家としても活動していましたが、ハイジャック事件の影響で国会議員の地位も失いました。

1960年の四月革命後、不正蓄財疑惑で捜査を受け、さらに新規航空会社（韓国航空）の参入による過当競争が追い打ちをかけました。1961年5月16日の軍事クーデター後、慎鏞頊は逮捕され、KNAと韓国航空の統合が軍事政権によって進められることとなりました。これに抵抗した慎鏞頊は、1961年8月末に漢江に投身自殺するという悲劇的な最期を遂げました。

KNAは、軍事政権による国策会社大韓航空公社の設立に伴い、1962年11月末に事業免許を取り消され、消滅しました。

使用機材と運航路線

KNAは、ダグラス DC-3やDC-4、ロッキードL-749コンステレーションなどの機材を使用しました。

1957年の時刻表によれば、以下の都市に就航していました。

国際線: ソウル - 香港
国内線: ソウル - 釜山、ソウル - 江陵、ソウル - 光州

創業当時の広告によれば、上記に加え、ソウル - 大邱線にも就航していました。

現在の大韓航空との関係

現在の大韓航空は、1969年に政府が大韓航空公社を韓進グループに売却して民営化したものであり、KNAや韓国航空とは直接的な関係はありません。しかし、KNAの存在は、韓国の航空産業の発展において重要な一歩であり、その歴史は語り継がれるべきものです。

結論

大韓国民航空社は、創業者慎鏞頊の情熱と夢を乗せて、韓国の空を切り開いた航空会社でした。激動の時代を背景に、多くの困難に直面しながらも、韓国の航空産業の礎を築いたその歴史は、忘れてはならないでしょう。

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