大韓航空機爆破事件

大韓航空機爆破事件

大韓航空機爆破事件は、1987年11月29日に韓国の大韓航空858便が北朝鮮の工作員によって爆破されたテロ事件です。この事件は当時、韓国から中東へ向かう旅客機において発生し、乗客115名が犠牲となりました。事件の背後には、南北関係や国際情勢が絡んでいます。

事件の経過

1985年から1986年にかけて、韓国での国際オリンピック委員会（IOC）による南北共同開催に関する議論が行われていました。1987年6月には韓国で民主化の機運が高まり、6月民主抗争を経て政権が変わるなど、南北両国の情勢は緊迫しました。その流れの中、金正日が指令を発し、オリンピック開催直前にテロを企図しました。

事件当日、858便の運航はボーイング707機で行われました。乗客は中東で働く韓国人労働者が多く、機内には金賢姫と金勝一という2人の北朝鮮工作員が搭乗していました。彼らはバグダードで爆発物を持ち込んでいたのです。

現地時間の11月29日午前4時、858便はアブダビを離陸し、インド洋の上空を飛行中に爆弾が炸裂しました。機体は空中で爆発し、すべての乗員・乗客が行方不明となりました。

捜索と発見

事故後、タイ航空管制と大韓航空が連携して捜索活動を行いましたが、初動が遅れたこともあり、事故機の残骸はなかなか見つかりませんでした。最終的には、12月にかけてアンダマン海で残骸が発見され、一部は当初から爆破事件であることが確定しました。

事件発生から数日後、金賢姫はバーレーンで拘束され、取り調べの際に自殺を図りましたが、生き延びました。彼女は北朝鮮の工作員であることを自供し、事件の詳細が明らかになるとともに、無関係な日本人名義のパスポートを利用していた事実も発覺しました。

動機とその後

事件の動機としては、ソウルオリンピックが近づく中での北朝鮮の孤立を打破するため、韓国政府の信頼性を損なわせようとしたという見方があります。北朝鮮は自らの指導力を誇示し、国際的な圧力を回避しようとしていたのです。

事件は国際的な非難を呼び、北朝鮮のテロ国家としての認識を強めました。ソ連や中国はその後、韓国との国交を結ぶ決断を下し、北朝鮮は国際社会から孤立を深めていきました。

金賢姫は後に特赦を受け、韓国において自伝を出版するなどして、事件の生き証人として様々な行動を取ります。一方で、事件の真相やその後の展開については、さまざまな陰謀論や捏造説が根強く残ることとなりました。

まとめ

大韓航空機爆破事件は、韓国の歴史における重要な転機であり、国際政治の複雑さを浮き彫りにする事件です。北朝鮮の工作員による冷酷なテロ行為は、国際社会に衝撃を与え、多くの人生が犠牲となりました。この事件は、韓国と北朝鮮の関係、さらには国際的な安全保障の問題を考えるうえで忘れてはならない教訓を提供しています。

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