大韓航空631便オーバーラン事故

大韓航空631便オーバーラン事故

2022年10月23日、大韓航空631便（エアバスA330-300型機）は、韓国の仁川国際空港からフィリピンのセブ空港へ向かう途中、着陸時にオーバーランする事故を起こしました。この事故により、乗員乗客173名に死傷者はいませんでしたが、機体は深刻な損傷を受け、修復不可能と判断され、登録抹消となりました。この事故は、大韓航空にとって23年ぶりの全損事故となりました。

事故の経緯

事故当日の19時20分（韓国標準時）、KE631便は仁川国際空港を出発し、セブ空港には22時00分（フィリピン標準時）に到着する予定でした。しかし、22時12分頃、着陸進入中にゴーアラウンド（着陸復行）を宣言し、一度着陸をやり直しました。当時のセブ空港周辺は、激しい雷雨を伴う悪天候で、南西からの風が9ノット（約17km/h）で吹いていました。

その後、KE631便は再び着陸を試みましたが、着陸を断念し上昇。セブ島北東部上空を約30分間旋回した後、3度目の着陸進入を試みました。そして、23時08分に滑走路に接地したものの、正常に減速できずオーバーラン。最終的に、機体は滑走路終端から約300メートル先の空港外周フェンス付近で停止しました。停止の際、ILS（計器着陸システム）の照明設備に衝突し、機体の脚部やコックピットなど各所に大きな損傷を受けました。

事故原因の調査

事故発生後、フィリピン民間航空局（CAAP）は、韓国民間航空局（KOCA）の協力を得て、事故原因の調査を開始しました。初期の調査では、油圧系統の故障がブレーキ不良の原因であるという暫定的な結論が出されました。また、機長は2回目の着陸進入時にウインドシアが発生し、機体が急激に接地したと証言。3回目の着陸進入時には、ブレーキに関する警告灯が点灯していたことも明らかになりました。

その後の対応

この事故を受け、大韓航空はソウル～セブ間の路線便名をKE631/632からKE615/616に変更しました。事故機のエアバスA330-300型機は、エアバスA330シリーズとして14番目の大破損事故となり、登録抹消されました。

この事故は、航空機の安全管理における様々な要素、特に悪天候下での着陸判断や機体の整備状況、パイロットの訓練などが重要であることを改めて示唆する事例となりました。

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