大韓航空803便着陸失敗事故

大韓航空803便着陸失敗事故

1989年7月27日、大韓航空803便がリビアのトリポリ国際空港で墜落するという悲劇的な事故が発生しました。この事故では、乗客および乗員75人と地上にいた4人が命を落としました。事故機はマクドネル・ダグラス DC-10-30型機で、その機体番号はHL7328です。

事故の経緯

803便は、韓国のソウルを出発点に、タイのバンコク、サウジアラビアのジッダを経由して、最終目的地のリビア・トリポリへ向かう国際線でした。この日のトリポリ国際空港は、濃霧に包まれており、滑走路の視距離はわずか100から800フィート（約30から244メートル）となっていました。

当時、滑走路27には着陸誘導システム（ILS）が装備されていましたが、事故の時点では機能しておらず、そのため視界が悪い中での着陸を強行することになりました。機長は着陸の進入を続ける決断を下し、その結果、803便は滑走路27に向かう途中でグライドパスを下回ってしまいました。

午後7時05分（7時30分とする情報もあり）に、803便は2つの建物に衝突し、機体は3つに分解して炎上しました。事故現場は滑走路27の1.5マイル手前にある果樹園で、多くの乗客と乗員、その後地上にいた4名が本事故の犠牲となりました。

この事故機には54歳のキム・ホジュン機長を含む18人の乗員と181人の乗客が搭乗しており、ほとんどはリビアでの建設業に従事する韓国人労働者でした。乗客190人の内訳は、韓国人が大半を占め、他にリビア人と日本人も含まれていました。

事故の原因

この事故の主な原因は、濃霧によって視界が悪化し、さらに航空機の着陸誘導機能（ILS）が使用できない状態で無理な着陸を試みたことによるパイロットの操縦ミスとされています。事故後の調査では、機長が着陸の15分前に管制塔との通信を失ったことが報告されています。

またリビアの国営通信社は、803便の1時間前にトリポリに着陸を試みた他の航空機が、同じく濃霧のためマルタへダイバートしたという事実も伝えました。

起訴と判決

事故後、機長と副機長はリビアの裁判所で過失罪で起訴され、機長には禁錮2年、副機長には禁錮18ヶ月（執行猶予付き）が言い渡されました。

事故機の履歴

803便の機体は、1973年9月に製造された後、受注予定の航空会社によってキャンセルされ、その後エア・サイアムにより1974年に購入されました。しかし、1976年には経営不振により手放され、1977年に大韓航空によって買収されました。

この事故は航空業界に多くの教訓を残し、航空機の安全性向上に向けた取り組みを再確認するきっかけとなりました。

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