大須賀町

かつて静岡県小笠郡に存在した町 - 大須賀町

かつて静岡県小笠郡に位置し、2005年の市町村合併によって姿を消した大須賀町（おおすかちょう）は、現在の掛川市の南西部に位置する地域です。遠州灘に面した海岸線と、北に控える小笠山の豊かな自然に恵まれ、歴史と文化が息づく町でした。

地理的特徴

大須賀町は、静岡県の西部、遠州地方の東部に位置していました。南側は広大な遠州灘に接しており、美しい海岸線が広がっていました。一方、北にはなだらかな稜線を描く小笠山がそびえ立ち、海と山に囲まれた変化に富んだ地形が特徴です。町の東側は同じ小笠郡の大東町に、西側は袋井市に、北西側は磐田郡の浅羽町（現在は袋井市の一部）と接していました。豊かな自然環境は、後述する特産品の生産にも寄与していました。

歴史の概要

大須賀町の歴史は、近現代における市町村合併によって形作られました。1956年（昭和31年）4月1日、旧横須賀町と旧大淵村が合併し、新たな自治体として大須賀町が誕生しました。同年9月30日には、隣接する笠原村の一部地域を編入し、その町域を確定させました。この体制でおよそ半世紀にわたり町政が運営されましたが、平成の大合併の流れの中で、2005年（平成17年）4月1日、周辺自治体である掛川市および大東町と合併することを選択。これによって、新設された掛川市の一部となり、大須賀町という名は自治体名としては消滅しました。

経済と産業

大須賀町の経済は、主に農業に支えられていました。温暖な気候と日照時間の長さ、そして水利の便も良く、様々な農産物が生産されていました。特に、静岡県を代表する特産品である緑茶、甘みが強く人気のメロン、そして色鮮やかないちごは、大須賀町を代表する農産物として広く知られていました。これらの産品は、地域の経済を潤し、町の活気を支えていました。

文化、観光、そして人々

大須賀町は、歴史的な遺産や魅力的な観光スポットに恵まれた地域です。町の象徴ともいえる横須賀城跡は、戦国時代に今川氏や武田氏、徳川氏といった有力大名が争奪を繰り広げた歴史のある山城跡で、現在も城郭の遺構が残り、国の史跡に指定されています。また、地域で最も重要な祭事の一つである遠州横須賀三熊野神社大祭は、三熊野神社を舞台に毎年春に行われ、絢爛豪華な祢里（ねり）と呼ばれる屋台が曳き回される様子は圧巻で、多くの観客を魅了します。春には、珍しい緑色の花を咲かせる御衣黄桜が見頃を迎え、訪れる人々の目を楽しませます。江戸時代の面影を残す清水邸庭園や、陰陽師・安倍晴明にゆかりがあるとされる晴明塚も、静かな歴史散策の楽しみを提供してくれます。かつては地域住民の娯楽の場として「横須賀座」という映画館も存在しました。地域の観光情報や特産品を紹介する拠点として、遠州南部とうもんの里総合案内所も設けられていました。
国際的な交流としては、アメリカ合衆国ニューヨーク州のコーニング市と姉妹都市提携を結んでいました。
また、大須賀町は文化人を輩出した地でもあります。人気サッカー漫画『キャプテン翼』シリーズの作者である漫画家の大島司氏や、アニメ主題歌などで活躍するシンガーソングライターの吉岡亜衣加氏は、この大須賀町の出身です。

教育と交通

教育機関としては、大須賀町立横須賀小学校、大須賀町立大渕小学校の二つの小学校と、町内唯一の中学校である大須賀町立大須賀中学校がありました。また、静岡県立横須賀高等学校も町内に位置し、地域の教育環境を支えていました。
交通においては、主要な幹線道路として国道150号線が東西に町を貫いていました。かつては鉄道も存在し、静岡鉄道駿遠線（開業当初は中遠鉄道）が1914年（大正3年）に開通しましたが、モータリゼーションの進展などにより1967年（昭和42年）に廃線となりました。現在は鉄道駅はありませんが、路線バスが住民の重要な交通手段であり、しずてつジャストラインと遠州鉄道の路線が運行されていました。

町内の構成

2005年の合併時点で、大須賀町を構成していた主な大字は以下の通りです。これらは現在も掛川市の一部として地名に残っています。
大渕
沖之須
西大渕
山崎
* 横須賀

大須賀町はその歴史を終えましたが、その豊かな自然、受け継がれる歴史や文化、そして育まれてきた産業は、現在も掛川市の一部として地域に根ざしています。

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