天女橋

天女橋：首里城公園を彩る歴史的石橋

天女橋は、沖縄県那覇市の首里城公園北側に位置する円鑑池に架かる、由緒ある石造アーチ橋です。別名、観蓮橋とも呼ばれ、その優美な姿は多くの人々を魅了し、日本の歴史と文化を今に伝える貴重な存在として、国の重要文化財に指定されています。また、「日本百名橋」にも選ばれており、橋梁としての美しさも高く評価されています。

概要

天女橋は、円鑑池の中島に鎮座する弁財天堂へと続く橋として、1502年（尚真王26年）に建造されました。現存する日本の石造アーチ橋としては最古のものです。琉球独自のアーチ橋の特徴として、アーチを構成する石の数が少なく、要石（キーストーン）が見られない点が挙げられます。これは、グスク（城）の門の石積みアーチ技術を応用したためと考えられています。天女橋の東側には、同じく国の重要文化財に指定されている放生橋（円覚寺）があり、合わせて見学することで、琉球の歴史と文化をより深く感じることができます。

歴史

琉球では、1451年（尚金福王2年）に築かれた長虹堤を嚆矢として、数多くの石造アーチ橋が建設されました。しかし、第二次世界大戦によってその多くが失われてしまいました。天女橋もまた、その歴史の中で様々な変遷を辿っています。

当初は、朝鮮から贈られた「方冊蔵経」（高麗版大蔵経）を納める経堂を円鑑池の中島に建立する際（1502年）に、同時に架けられた石橋でした。当時は観蓮橋と呼ばれていました。1609年、薩摩藩による侵攻により経堂は破壊されてしまいますが、1621年に弁財天を祀る堂として再建された際に、橋も「天女橋」と呼ばれるようになりました。1643年には、第二次世界大戦の戦火により弁財天堂と共に橋の高欄が失われましたが、1968年に弁財天堂、翌1969年には高欄が復元され、往時の姿を取り戻しました。1972年5月には、その歴史的・文化的価値が認められ、国の重要文化財（建造物）に指定されています。

天女橋は、単なる橋としての役割だけでなく、琉球王国の歴史、文化、そして人々の信仰心を今に伝える貴重な文化遺産です。首里城公園を訪れた際には、ぜひ天女橋を渡り、その美しい景観と歴史に触れてみてください。

周辺情報

首里城
沖縄県立芸術大学

参考文献

松村博『日本百名橋』鹿島出版会
現地の紹介看板

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