長虹堤

長虹堤（ちょうこうてい）

長虹堤は、1451年に琉球王国によって建設された、全長約1キロメートルの堤防と橋からなる道路です。現在の那覇市泊の崇元寺付近から、松山付近の伊辺嘉麻を結んでいました。

歴史

かつての那覇は、浅い入り江と、その入口をふさぐように横たわる浮島という島で構成されていました。浮島は、現在の久米や松山付近にあたります。中国からの使者は浮島に上陸し、浅い海を渡って首里へ向かう必要があり、琉球王府は使者を迎える際に国中の船を集めて舟橋としていました。

1450年に即位した尚金福王は、翌年に冊封使を迎えるにあたり、浮島と首里を結ぶ堤防道路の建設を決定し、宰相の懐機に命じました。懐機は、海の深さと波の高さから工事が難航すると考え、祭壇を設けて祈祷を行ったところ、翌日には潮が引き、海底が現れたという伝説が残っています。工事には多くの人々が参加し、その後、懐機は神に感謝するため、天照大神を祀る神社と長寿寺という寺院を建立しました。また、長虹堤建設に携わった安波根祝女が病死し、人々が彼女を堤防の傍らに埋葬した場所が、後に御嶽（うたき）となったという伝承も残っています。

石井望は、懐機が天照大神を祀ったのは、久米村を封じ込めるためだと主張しています。その根拠として、長寿寺の位置、伊勢神道が琉球では特殊であること、懐機が唐人ではなく尚泰久王と同一人物であるという説を挙げています。

当初は「浮道」と呼ばれていましたが、1633年に冊封使に随行した胡靖が「遠望すれば長虹の如し」と述べたことから、「長虹堤」と呼ばれるようになりました。長虹堤の建設により、浮島と首里の間には土砂が堆積し、干潟が形成されました。交通の便が良くなったことで、那覇への人口集中が進み、住宅用地が不足するようになり、18世紀には干潟を埋め立てて宅地とする工事が進められました。

1756年の冊封使、周煌の記録『琉球国志略』には、長虹堤の様子を描いた「長虹秋霽」という絵図が収録されています。また、この絵図を元にした葛飾北斎の浮世絵『琉球八景』も制作されました。明治時代までは主要道路として利用されていましたが、周辺の交通網の発達に伴い、現在は普通の道路となっています。

位置と構造

現在の那覇市において、長虹堤のルートは、泊の崇元寺前から安里川を渡り、牧志二丁目北部、美栄橋駅付近を経て、松山一丁目の久茂地チンマーサー跡付近に至ります。全長約1キロメートル、高さ約1.5メートルの堤防道路であり、安里橋と美栄橋を含む7箇所に石橋が架けられていました。

現在では、美栄橋から西側は区画整理により痕跡が残っておらず、牧志二丁目内の十貫瀬通りと呼ばれる道路が、当時の痕跡をわずかに留めています。長虹堤の石橋は、琉球王国で最初の石造アーチ橋であったとされています。これは、中国からの賓客を迎えるにあたり、中国風の意匠を示す配慮があったと考えられています。しかし、石造アーチ構造は、長虹堤以前にも座喜味城の城門などに見られ、これらの建築技術が応用されたとも考えられます。長虹堤の建設を契機として、琉球王国では慈恩寺橋や天女橋など多くの石造アーチ橋が建設されました。

安里橋

安里橋は、崇元寺前にあったことから崇元寺橋とも呼ばれます。崇元寺建立の際に改造されましたが、1670年の洪水で流失し、木製の仮橋が架けられました。この仮橋も1677年の洪水で破損したため、恩河親方安治が大規模な改修を行いました。改修後の橋は、全長70メートルで、中央部の大きなアーチとその両側の小さなアーチからなる曲線的な形状をしており、橋上には八対の石造宝珠柱が配されていました。橋脚には大きな三角形の防水基が備えられていましたが、沖縄戦で失われました。現在の崇元寺橋は、元の橋から数十メートル上流の安里川に架けられています。

美栄橋

当初は待兼橋と呼ばれていた橋が、後の美栄橋にあたると考えられています。1735年から翌年にかけて改修が行われ、1744年には新修美栄橋碑が建立されました。1892年には大規模な改修が行われ、西洋式の石造アーチ橋となりました。しかし、この橋も沖縄戦や戦後の区画整理により失われており、現在の美栄橋は、元の橋から数十メートル東方の沖映通りが久茂地川を渡る橋となっています。新修美栄橋碑は、1977年に那覇市の有形文化財に指定されています。名称は、新橋（みーばし）が転訛したものとされています。

脚注

参考文献

「沖縄の土木遺産」編集委員会編　『沖縄の土木遺産』　沖縄建設弘済会、2005年、ISBN 4-89982-087-9
沖縄文教出版編集部編　『那覇今昔の焦点』　沖縄文教出版社、1971年
* 那覇市企画部文化振興課編　『那覇市史　通史篇第1巻』　那覇市役所、1985年

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