天徳寺 (福井県若狭町)

天徳寺の概要

天徳寺（てんとくじ）は、福井県三方上中郡若狭町に位置する高野山真言宗に属する寺院です。山号は宝篋山であり、名水として知られる瓜割の滝をその境内に抱えています。この寺は、自然との調和と深い歴史を持つ場所として、多くの人々に親しまれています。

起源

天徳寺の創建は約1300年前に遡り、養老年間にまで遡るといいます。泰澄大師が加賀の白山を開いた際、当地の宝篋ケ嶽で馬頭観音像を刻み、その岩窟に安置したことが始まりとされています。当時の縁起によれば、泰澄大師から200年後の天暦年間、安置された馬頭観音が7日間奇瑞を現したため、元真僧都が急遽観音堂を草堂に移しました。この霊験が広まり、当時の村上天皇が宣旨を下し、堂宇の建立に着手しました。

天徳元年に新たに建立された観音堂は七間四面の大きさを誇り、その後食堂、鐘楼、大門などが次々に完成し、七堂伽藍を備えました。また、村上天皇からの寄進により、斎田も設けられました。正治2年には北条政子が源頼朝の菩提を祈るために法華堂を建てるなど、寺は栄えました。これにより、馬頭観音を安置する地名が宝篋山となり、村上天皇の時代に因んで「天徳寺」と名付けられたと言われています。

起源については、門前の湧水信仰とも結びつけることができます。この水源地である水の森に祀られている水神（不動明王）への近隣住民の信仰は根強く、旱魃の際には多くの人々が雨乞いの祈願を行った事例も残されています。このことから、天徳寺は水の信仰と密接な関係を持っていることが明らかです。

瓜割の滝

天徳寺の境内には「瓜割の滝」と呼ばれる美しい滝があります。この滝は実際には北国の冷たく湧き出る清水で、昭和60年には環境庁によって全国名水百選に選ばれました。この水は「瓜割清水」とも称され、滝のように流れ落ちることから瓜割の滝として知られています。

江戸時代、元禄期の地誌書『拾椎雑話』には、天徳寺の門前に涌き出る清水について記載されています。この地の水はあまりにも冷たく、夏には氷のようになるといいます。そのため、この流水は地域全体に広く知られていました。

和歌森太郎編の若狭の民俗によると、直ぐ近くのこの湧き水があったことで、天徳寺が成立し、その周辺に村が形成されたと言われています。寺院が集落の成り立ちにおいて重要な役割を果たしたことが伺えます。

四国八十八ケ所石仏

瓜割の滝の上方には、江戸時代に建立された四国八十八ケ所の石仏が並んでいます。時の住持本如上人によって空海（弘法大師）の夢告を受ける形で造営されたこの霊場には、佐渡島で彫られた88体の石仏が安置されています。この場所については、かつて若狭出身の作家水上勉が「石仏で名高い天徳寺」としてその美しい景観と静けさを称賛しました。

このように、天徳寺はその歴史と自然が織りなす調和を保ち続け、多くの人々に深い感動を与えています。訪れる人々にとって、心を穏やかにし、自らの信仰を深める場となっています。

もう一度検索