天橋義塾

天橋義塾（てんきょうぎじゅく）

概要

天橋義塾は、1875年（明治8年）に京都府与謝郡宮津（現在の宮津市）に開校した私立学校です。1884年（明治17年）に閉鎖されるまでの短い期間でしたが、当時の教育機関としては異質な存在でした。地域住民の出資によって運営され、民主的な結社としての側面も持っていたことが特徴です。

設立の背景

明治維新後、宮津では旧宮津藩士の子弟の教育が大きな課題となっていました。この状況を憂慮した旧藩士の有志や小笠原長道（後の小室信介）らが中心となり、学校設立の動きが進みました。1875年（明治8年）8月27日、豊岡県に天橋義塾の開業願を提出し、同年10月29日に設置が許可されました。運営は、社員からの拠出金と生徒の月謝によって賄われました。

教育内容

天橋義塾の教育は、読物輪講、問答、作文、算術の4科目を基本としていました。特に、歴史と法律が重要視された点が特徴です。各級の課程を修了すると試験が実施され、合格することで進級が認められました。授業は午前と夜間の二部制で、生徒の学力に応じて席順が決められていました。

また、討論を重視していたことも見逃せません。月に数回開催された生徒会議では、寄宿舎の規則を定めたり、特定のテーマについて議論を交わしたりしました。使用された教科書は、福沢諭吉の『文明論之概略』や竹中邦香の『民権大意』などの啓蒙書に加え、和漢書籍も用いられました。

閉鎖

1884年（明治17年）、宮津中学校の開設が決定しました。天橋義塾の幹事から、義塾の土地建物を中学校に寄付する提案がなされ、社員の間で議論が重ねられました。その結果、同年9月には5年間の教育中止が決議され、天橋義塾は解散しました。

関連人物

小笠原長道（小室信介）: 天橋義塾の設立を提案した人物です。
沢辺正修: 天橋義塾の社長を務めました。
粟飯原曦光: 天橋義塾で学頭を務めました。

主な出身者

長田桃蔵: 衆議院議員として活躍しました。

参考文献

* 『天橋義塾と自由民権運動』京都府立丹後郷土資料館、28頁。

もう一度検索