天江喜七郎

天江喜七郎：国際社会を舞台に活躍した外交官

天江喜七郎氏は、1943年宮城県に生まれ、日本の外交官として長きにわたり国際社会で活躍しました。一橋大学法学部卒業後、外務省に入省。ロシア語研修のためイギリス陸軍語学学校に留学するなど、国際的なキャリアを積みました。

彼の外交官としての経歴は実に多岐に渡ります。モスクワ勤務、イラン革命時の在イラン日本大使館勤務、ソビエト連邦崩壊期の在ソ連日本大使館勤務など、激動の時代を歴史の最前線で経験しました。特に、2004年のオレンジ革命時には駐ウクライナ特命全権大使として、ウクライナの政治情勢の変動に直面し、その経験は後々まで彼の外交観に影響を与えたと言えるでしょう。

外交官としての任務に加え、天江氏は人道的な活動にも積極的に関与しました。ソウル勤務時代に、日本の息子に宛てた手紙を韓国語で在ソウル日本大使館の広報誌に連載したところ、大きな反響を呼びました。この手紙は後に『息子への手紙』として出版され、日本と韓国の両方でベストセラーとなり、印税は知的障害児施設に寄付されました。このエピソードは、彼の温かい人柄と国際交流への貢献を象徴的に示しています。

また、大阪担当特命全権大使に就任した際には、関西地域への理解を深め親しみをもってもらうため、自ら外務省首脳に掛け合い、名称を「関西担当大使」に変更するほどの熱意を見せました。

外務省退官後も、その経験と知識を生かし、外務省参与、国立京都国際会館館長、同志社大学法学部客員教授などを歴任。国際関係、外交、そして文化交流という幅広い分野で活躍し続けました。

彼のキャリアは、単なる外交官としての職務を超えた、国際社会への貢献と文化交流への熱意を示しています。在ウクライナ大使、在シリア大使、中近東アフリカ局長など、要職を歴任した経験から、国際情勢に関する深い知識と洞察力を持ち合わせていたことは間違いありません。そして、これらの経験を通して培われた多角的な視点と、人道的活動への積極的な姿勢は、彼を多くの国々の人々に深く理解され、尊敬される存在としたのでしょう。

さらに、天江氏は数多くの論文を発表しており、学術的にも国際情勢に貢献しています。オレンジ革命やウクライナ危機に関する論文、源氏物語に関する論文、環境問題と日本外交に関する論文など、その内容は多岐に渡り、国際関係、文化、環境問題といった幅広い分野にわたる深い知見を示しています。

多様な経験と深い知識、そして温かい人柄。天江喜七郎氏は、まさに国際社会を舞台に活躍した稀有な外交官でした。彼の功績は、これからも多くの人々に記憶され、未来への指針となるでしょう。

経歴の要約

1943年：宮城県仙台市生まれ
1967年：一橋大学法学部卒業、外務省入省
1979年：在イラン日本大使館一等書記官
1990年：在ソビエト連邦日本大使館公使
1998年：外務省中近東アフリカ局長
2002年：在ウクライナ特命全権大使
2006年：外務省退官、外務省参与
2009年：国立京都国際会館館長
2010年：同志社大学法学部客員教授
その他、多数の要職を歴任

受賞歴

2019年：春の叙勲で瑞宝中綬章を受章

著書・論文

『息子への手紙―韓国にいる父親より日本の息子へ』
* 多くの学術論文を発表

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