天江富弥

天江 富弥（あまえ とみや）

天江富弥（1899年3月 - 1984年6月22日）は、日本の児童文化研究家であり、郷土史家、さらにコケシ収集家としても名を馳せました。本名は「天江富蔵」で、宮城県仙台市に生まれました。彼は太平洋戦争後、日本で初めての炉端焼きの店を開いたことでも知られ、仙台の文化シーンに多大な影響を与えました。

生い立ちと教育

富弥は、仙台に位置する大崎八幡宮の御神酒の蔵元「天賞酒造」の7代目である天江勘兵衛の三男として育ちました。その名にある「富蔵」は、彼が生まれた年に建設された大きな蔵から由来しています。子供時代の1910年には、父の酒造所を富弥名義で運営を開始し、早くから経済活動に関与しました。

教育面では、今の仙台市立仙台商業高等学校を卒業後、1920年には明治大学商科を修了。その翌年、富弥は友人と童謡雑誌『おてんとさん』を創刊し、これが彼の文化活動の始まりとなりました。また、竹久夢二や野口雨情など著名な文人たちとも親交を深めました。

文化活動とコケシ研究

1927年には仙台市内に「小芥子洞」という郷玩店を開業し、続いて1928年には、日本初のコケシに関する文献『こけし這子の話』を発表しました。この文献は、後のコケシ研究の基礎を築くものとして評価されています。同年、武井武雄が発行した『日本郷土玩具 東の部』の序文でも、富弥はコケシについて重要な情報源となっていることが言及されています。

酒造業への関与

富弥の家業である天江酒造は、1923年に法人化され、富弥も出資者のひとりとなりました。1930年には上京し、実家の酒の販促のために銀座に問屋を開設しましたが、ビジネスの拡大は思ったようにはいきませんでした。その後、こけし愛好家を巻き込む形で「勘兵衛酒屋」を開業し、多くの文化人が訪れる場所となりました。

炉端焼きの先駆者

1940年代後半、富弥は仙台の本櫓丁に「炉ばた」を開店しました。この炉端焼き店は、日本初の炉端焼きの店とされ、囲炉裏を囲んで人々が交流するサロンのような空間でした。店の内装には彼のコレクションである骨董品が飾られ、常連客たちとの石火の会話が楽しめるよう毎日運営されていました。特に、食材の調達にはこだわりがあり、新鮮な素材が提供され続けました。

最晩年と功績

富弥は、郷土史にも関心を持ち、宮城県民藝協会の初代副会長にも就任しました。郷土史家としての活動により、河北文化賞を受賞するなど、地元に貢献しました。1984年に没した後も彼の業績は評価され続け、2022年には「天江富弥展」が開催されるなど、彼の文化的遺産は引き継がれています。

家族

彼の親族には、外交官の天江喜七郎がいます。また、妹のきくは箱守仙一郎の母にあたります。

富弥の多彩な活動は、郷土の文化や伝統を次世代に引き継ぐ大切な役割を果たしました。特に、こけしや炉端焼きは、今でも多くの人々に愛され、彼の影響を受けています。

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