天河 (航空機)

天河（てんが）について

天河は、第二次世界大戦中に大日本帝国海軍によって計画されたジェット戦闘爆撃機であり、陸上爆撃機の「銀河」の後継機としての役割を果たすべく開発が進められました。この計画は1943年（昭和18年）に始まり、1944年（昭和19年）には試作機の整理が行われるなど、具体的な形を持つところまで進展しましたが、結局、終戦までに実際の飛行試験を行うことはできませんでした。

天河は、当初から海軍航空技術廠、通称空技廠により設計され、銀河の技術を引き継ぐ形で推進されました。エンジンには、空技廠が開発した軸流式ターボジェットエンジン「ネ30（TR30）」や、日立製の「ネ230」を搭載する計画がありました。これらのエンジンはそれぞれ、地上静止推力が850kg、885kgとされており、銀河に使用されていたネ30エンジンを用いた実験機を経て、最終的に天河の試作機が製作される予定でした。

実際のエンジン「ネ30」の一号機は1944年10月に完成を見ましたが、残念ながら、その性能を十分に試験する時間はありませんでした。こうした技術開発の背景には、当時の航空技術の革新や、戦争の激化に伴う戦闘機および爆撃機の需要増加がありました。航空戦におけるジェット機の重要性が認識される中、天河は新たな可能性を示すものと期待されていました。

また、天河の設計においては、銀河を基にした「銀河改」とも形容できる機体が考えられ、銀河の特性をそのまま活かしながら、ジェット機としての特長を付与するアイディアが凝られていました。文献によると、情報機関や技術者たちによる熱心な検討も行われていたことが窺えます。

1945年には空技廠内に設けられた検討会によって開発の検討が再開されたとの資料もあり、当時の技術者たちの情熱が感じられます。しかし、戦局が厳しくなる中での開発は、現実の戦場での要求に対しても一定の制約を強いられ、その実現を果たすことは困難でした。

このように、天河の開発は日本の航空技術における一つの試みに他ならず、仮に戦争が続いていた場合、どのような形で実現したのかは、今では知る由もありません。天河は未完成のまま歴史の彼方に消えていきましたが、当時の航空技術の実情を理解するための貴重な資料として、今もなお研究の対象となっています。

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