天津条約 (1885年6月)

天津条約（1885年）

天津条約は、1885年6月9日に清朝とフランスの間で締結された、清仏戦争の終結を画した重要な講和条約です。この条約は、清国側の代表である北洋大臣李鴻章と、フランス側の代表であるジュール・パトノートル公使によって調印されたことから、「李・パトノートル条約」とも呼ばれます。

条約締結の背景

条約締結の直接的な背景には、トンキン戦争（清仏戦争）の講和があります。両国は、先んじて締結された天津停戦協定（李・フルニエ協定）を基に、天津で講和交渉を進め、この天津条約に至りました。この条約は、癸未条約や甲申条約によって確立された、ベトナム（アンナン及びトンキン）に対するフランスの宗主権を、清が正式に認める内容を含んでいました。

条約の主な内容

天津条約の主な内容は以下の通りです。

1. ベトナムにおけるフランスの保護権の承認: 清は、ベトナムをフランスの保護国として正式に認め、ベトナムに対する宗主権を放棄しました。この決定により、フランスはインドシナにおける植民地支配を確立し、その勢力を拡大することに成功しました。
2. 通商港の開港: ラオカイ（保勝）とランソン以北に、それぞれ通商港を開港することが定められました。これにより、フランスは中国南部における通商活動を活発化させました。
3. 鉄道建設に関する協議: 清が鉄道を敷設する際には、フランスの業者と事前に協議することが義務付けられました。これは、フランスが中国における鉄道建設事業に影響力を持つための重要な取り決めでした。
4. フランス軍の撤退: フランスは、基隆と澎湖島から軍を撤退させることが定められました。これは、清仏戦争における両国の軍事的な緊張を緩和するための措置でした。

条約の影響

天津条約は、フランスのインドシナ植民地支配を確定させ、フランスによる植民地帝国拡大を加速させました。また、清朝にとっては、長きにわたり抱いていたベトナムに対する影響力を失うこととなり、その後の東アジアにおける国際関係にも大きな影響を与えました。この条約は、清仏戦争の終結という直接的な結果だけでなく、その後の東アジアの国際秩序を大きく変える出来事として、歴史に深く刻まれています。

関連事項

天津条約（曖昧さ回避）
天津条約 (1885年4月)（「李・伊藤条約」とも呼ばれる）
* 雲南問題

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