天満紡績争議

天満紡績争議

天満紡績争議は、明治時代中期に大阪府の天満紡績（現在の大阪市北区）で発生した、2度にわたる労働争議です。日本の紡績業における最初の労働争議として知られています。

概要

この争議は、労働環境の改善を求める工員たちの声が、会社側に届かなかったことが原因で発生しました。明治時代の初期は、日本の産業が急速に発展した時期であり、特に紡績業は多くの労働者を抱えていました。しかし、労働条件は厳しく、低賃金や長時間労働が常態化していました。このような状況下で、天満紡績の工員たちは、自分たちの権利を主張するために立ち上がったのです。

1889年の争議

1889年9月30日、天満紡績で働く女工300名（250名という説もあります）が、昼休みに賃上げを求めて話し合い、休憩時間後も作業に戻りませんでした。会社側の役員が様子を見に来ると、女工たちは賃上げを要求しました。役員は社長と相談して回答することを約束し、女工たちは一旦仕事に戻りました。

しかし、会社側からの回答がなかったため、10月2日に女工たちは再度回答を求めました。これに対し、会社側は首謀者とみなした女工を解雇すると通告したため、女工たちは怒り、積立金の返還などを要求しました。この動きに男性工員も同調し、10月6日、会社側は女工たちの要求を受け入れ、事態は収束しました。

1894年の争議

1894年1月27日、夜勤を終えた工員たちが、技師や工務係ら上司3名の解雇を求めて、午前6時頃から食堂を占拠しました。出勤してきた昼勤の工員たちに同盟罷業を呼びかけ、これに従わない一部の工員を殴打しました。会社側の要請で、警察官が工場に入り、作業を再開させました。会社側は、技師たちに解雇相当の理由はないとして、工員たちの要求を拒否しました。納得できない工員の中には、退社する者もいました。

昼勤工員の殴打事件では、工員6名が暴行罪で告発され、5名が重禁錮2か月・罰金3円、1名が控訴後に重禁錮1か月・罰金2円の判決を受けました。

意義

天満紡績争議は、日本の労働運動の先駆けとして重要な意味を持っています。この争議を通じて、労働者たちは団結して権利を主張することの重要性を学びました。また、会社側も労働者の意見に耳を傾ける必要性を認識するきっかけとなりました。この争議は、その後の日本の労働運動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

松尾洋「天満紡績争議」（『国史大辞典 9』吉川弘文館、1988年）ISBN 978-4-642-00509-8
高村直助「天満紡績争議」（『日本歴史大事典 2』小学館、2000年）ISBN 978-4-09-523002-3

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