天灯

天灯（てんとう）について

天灯は、アジアのいくつかの地域で見られる熱気球の一形態であり、主に中国やタイ王国で親しまれています。この独特な構造の天灯は、紙と竹を使用し、内部には光源が設けられています。このため、提灯の一種とも考えられ、特に伝承では孔明灯とも称されています。最初は、通信手段として用いられていましたが、現在では祭りや祈祷儀式での重要なアイテムとして位置づけられるようになっています。海外では、スカイランタンやチャイニーズランタンと呼ばれることもあります。

起源と伝説

天灯の起源にはさまざまな伝説があります。三国時代に諸葛亮が敵軍に包囲された際、光を放つ大型の籠を使って救援を求めたという話が有名ですが、歴史的な事実かどうかは不明です。また、歴史学者のジョゼフ・ニーダムは、1241年のモンゴル人による戦で使用された熱気球の記録を挙げています。このように、天灯は古くから人々の生活や文化に根付いてきたことが分かります。

天灯の構造

天灯は、主に竹で作られた底部に、大きな紙袋が固定された構造です。現代では底部が針金で作られることもありますが、熱気球の原理－すなわち、温められた空気は周囲の空気よりも軽くなるため上昇するというメカニズムは、現在も変わりません。底部には油を浸した紙が設置され、燃焼によって熱せられた空気が内部を満たし、天灯を空中へと引き上げます。

習慣と文化

天灯は、戦時の連絡手段の他に多くの民間伝承を生んできました。特に台湾では、盗賊を恐れた村人が安全を確認するために天灯を使ったという伝説があり、現代では元宵節に無病息災を祈願して天灯を放つ習慣が根付いています。新北市の平渓区では、1980年代後半から天灯イベントが盛んに行われ、年間を通じて多くの人々が天灯を楽しむようになりました。

台湾では、天灯の使用が火災に繋がる恐れがあるとして、政府が点火時の風速や燃料に関する制限を定めた『天灯施放作業指導要点』を策定しました。これにより、天灯が放たれる地域や条件が厳格に管理されています。

日本や他国での天灯

日本においても、天灯に類似した文化が存在します。新潟県の津南町や、秋田県の上桧木内で行われる紙風船の行事などがその例です。これ以外にも、世界中で天灯に似た風習が見られます。

タイでは、コムローイとして親しまれており、チェンマイのローイクラトン祭りでは数千の灯籠が空を飾ります。ポーランドやイギリスでも儀式として行われることがあり、特にポーランドでは大規模なイベントが報道されたこともあります。

海外での禁止

しかし、天灯の利用は一部の国では禁止されています。アメリカのイリノイ州やハワイ州、オーストラリアなどでは、火災の危険性から天灯の使用が制限されています。これにより、天灯の美しい光景が見られなくなる地域も増えてきています。

天灯は、その美しさや伝承により、多くの人々に愛され続けていますが、安全性を考慮した管理が求められています。

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