天狗火

天狗火（てんぐび）

天狗火は、神奈川県、山梨県、静岡県、愛知県といった地域に伝わる、不思議な怪火の伝承です。特に水辺に現れることが多く、赤みを帯びた光を放つとされています。

天狗の仕業？

その名前が示すように、天狗火は天狗が引き起こす怪異現象の一つと考えられています。神奈川県や山梨県では、川天狗の仕業とされ、夜間に山から川へ降りてきて魚を捕まえる、あるいは山の森の中を飛び回るといった話が伝えられています。

遭遇すると病気になる？

天狗火に遭遇すると、病気になると恐れられているため、地域の人々は天狗火を非常に恐れています。もし遭遇してしまった場合、地面にひれ伏して見ないようにするか、頭の上に草履や草鞋を乗せることで、災いを避けられると言われています。

地域によって異なる天狗火

遠州の天狗火

遠州（静岡県西部）に現れる天狗火は、提灯ほどの大きさで、山から現れると数百個にも分裂して空を舞うと言われています。これは「天狗の漁撈（ぎょろう）」とも呼ばれています。

愛知県豊明市の民話

愛知県豊明市には、天狗火が人を助けたという民話が残っています。日照りが続き、田んぼの水が枯れそうな時、ある人が夜中にこっそり川から田へ水を引くための水門を開けていました。見回りをしていた村人たちの前に、ある晩から天狗の顔が浮かび上がった炎が現れ、水門を明るく照らし出しました。水門を開けようとする者は、良心の呵責からか、明るく照らされて悪事ができなくなったのか、水門を開けるのを思いとどまるようになり、水争いはなくなったと言われています。

春日井市の民話

愛知県春日井市の民話では、ある村人が山中で雷雨に遭い、動けなくなっていたところ、天狗火が現れて暖を取ることができ、無事に帰ることができたとされています。しかし、この地域では天狗火が見える夜に外に出ると、山に連れ去られるという伝承もあります。ある男が天狗火に立ち向かったところ、黒くて大きな何かに捕まえられ、山の奥へ連れ去られてしまったという話も残っています。

まとめ

天狗火は、地域によってさまざまな伝承を持つ怪火です。恐ろしい存在として語られる一方で、人を助ける存在としても語り継がれており、日本の豊かな民間伝承を今に伝える怪異の一つと言えるでしょう。

関連項目

* 日本の妖怪一覧

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