天理村

天理村：満洲の地に刻まれた天理教の開拓精神

天理村は、1934年（昭和9年）に満洲国に建設された天理教による開拓村です。この村は、天理教の教義に基づいた理想郷を目指し、異国の地で新たな生活を築こうとした人々の希望と苦難の歴史を物語っています。

建設の経緯

1932年、天理教青年会は満洲国での入植計画を具体化させるため、現地調査を開始しました。当初、哈爾浜市郊外の松花江支流である阿什河右岸地区を入植地としましたが、関東軍からの命令により計画は一時頓挫します。しかし、現地の建設事務所との交渉の結果、阿什河左岸地区に新たな入植地を確保し、再出発することになりました。

1934年1月16日、関東軍から開拓民の移民許可が下り、同年11月から本格的な入植が開始されました。集落は「生琉里」（ふるさと）と名付けられ、村の中心には生琉里教会が建設されました。その他、天理村小学校、診療所、事務所などの生活に必要な施設も整備されました。

安全対策と生活

天理村は、匪賊の襲撃から住民を守るため、周囲に電流を流した鉄条網、堀、擁壁などの防衛設備が設けられました。また、入植者の増加に伴い、1935年には西生琉里が建設され、村の規模は拡大しました。

村で収穫された野菜は哈爾浜市内で販売され、住民の生活を支えました。乙種移民（自由移民）の中では、天理村は最も早く経営が安定した村として知られ、国内外から多くの視察者やメディアが訪れました。

終焉とその後

1945年、日本の敗戦により天理村は崩壊し、村は混乱に陥りました。多くの死傷者が出たほか、残留孤児や婦人も発生するなど、悲惨な状況となりました。帰国した天理村の旧村民たちは、三重県伊賀市や奈良県奈良市などで農地を開墾し、新たな生活を始めました。

天理村は、天理教の教えを実践し、満洲の地で理想の村を築こうとした人々の足跡です。しかし、戦争という時代の波に翻弄され、その夢は無残にも打ち砕かれました。それでも、旧村民たちは帰国後も開墾を行い、新たな生活を築き上げました。天理村の歴史は、人々の希望、努力、そして時代の残酷さを今に伝える貴重な教訓となっています。

外部リンク

天理教生琉里分教会

もう一度検索