天皇・皇后と日清戦争

『天皇・皇后と日清戦争』

『天皇・皇后と日清戦争』は、1958年3月14日に公開された新東宝製作の戦争映画です。本作は、日清戦争の歴史的背景を中心に、明治天皇の姿とその影響力を描いています。1894年7月の豊島沖海戦から始まった両国の緊張は、8月1日の宣戦布告につながります。近代化を遂げた日本と大国清との戦いは、日本の構築した近代国家のアイデンティティの形成が反映されています。

あらすじ

物語は、日清戦争を背景に展開されます。豊島沖での戦闘が激化し、両国が声明を発する中、日本は勢いを増し、戦局を有利に進めます。しかし、この戦争は日本と清国だけの問題ではなく、欧米列強もその結果に干渉してくるのです。

映画の背景

本作は、明治天皇の視点から日清戦争を描く大作であり、過去に公開された『明治天皇と日露大戦争』に続く作品です。1959年には続編として『明治大帝と乃木将軍』が公開され、天皇をテーマにした三部作が完結します。新東宝は、経営難を乗り越えるために、制作費2億円を投じて大作を作り上げた背景もあり、一気に負債を解消することに成功しました。

主要キャスト

主演は、明治天皇役を演じる嵐寛寿郎です。昭憲皇后役には高倉みゆきがキャスティングされ、彼女の起用が製作陣内部での議論を招きましたが、最終的には大蔵貢社長の意向により実現しました。映画には、伊藤首相や山県大将など、当時の実在の政治家や軍人も登場し、作品にリアリティを与えています。

物語の工夫

本作は単なる戦争映画に留まらず、昭憲皇太后の赤十字活動や、兵士たちとその家族の絆など、人間ドラマを重視して描かれています。女性客を意識した作品作りがされており、戦争という厳しいテーマの中でも、友情や愛情が見え隠れするシーンが多く見受けられます。

製作の裏側

映画の企画は、元々新東宝専務の山梨稔が持っていたもので、日清戦争や日露戦争をテーマにした一連の歴史映画を作る計画の一環として進められました。しかし、急遽『日露戦争』が先に製作されたことにより、後の作品はその影響を受けることになりました。

発売とその後

この映画は2001年にDVDとして発売され、さらに2002年には三部作をまとめたDVD-BOXが登場しました。また、2014年にはデアゴスティーニからDVDが再リリースされ、過去の名作として多くのファンに親しまれています。

まとめ

『天皇・皇后と日清戦争』は、その歴史的背景やキャストの魅力、物語の深みが評価され、戦争映画としてだけでなく、日本の文化史の一端を担う作品として位置づけられています。明治時代の日本の姿を再現し、観る者に重厚なドラマ体験を提供する映画です。

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