天秤を持つ女

絵画『天秤を持つ女』の魅力

『天秤を持つ女』（てんびんをもつおんな）は、17世紀のオランダの巨匠、ヨハネス・フェルメールによって1662年から1663年ごろに描かれた名画です。この作品は、現代においても多くの人々に愛されており、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートに所蔵されています。描かれている女性は、空の天秤を持ち、目の前には輝く宝石箱や真珠の首飾りが散らばるテーブルが設けられています。背景には「最後の審判」を描いた絵が飾られており、キリストが両手を広げる様子が見えます。

主題の解釈と象徴

この作品には多くの解釈が存在します。まず、女性が持つ天秤は単なる道具でなく、彼女自身やその人間性を図る象徴として提起されています。フェルメールのモチーフの中には、聖なる真理や神の裁きに関連するテーマが含まれることが多く、この作品もその一環とされています。

『マタイによる福音書』の「高価な真珠のたとえ話」に基づく解釈では、女性は自身とキリストの行動を比較し、霊的な価値を見出そうとしているとも考えられています。また、美術史家の中には、女性が「胎児の魂を量る象徴」として描かれているとし、聖母マリアとの関連性を示唆する意見もあります。

さらに、壁にかかる鏡は、女性が望むものは空虚であるというメッセージを内包しているとも考えられています。これは、現世の財宝よりも天上の宝物の方がはるかに重要であるということを暗示しているのかもしれません。

来歴と歴史

『天秤を持つ女』は、もともとは「金を量る女」と呼ばれていましたが、詳細な技術分析によって、女性が持つ天秤には何も載せられていないことが判明しました。この作品は、フェルメールの最も重要な後援者であったピーテル・ファン・ライフェンが所有していた絵画コレクションの一部であり、ファン・ライフェンの死後、彼の女婿がその遺品を受け継ぎました。その後、1696年にアムステルダムで行われたオークションで出品され、155ギルダーで落札されました。この時のオークションでは、他のフェルメールの作品よりも高い価格がつきました。

結論

このように、『天秤を持つ女』はその美しさだけでなく、深い寓意や象徴性を持つ作品として、私たちに多くの視点を提供してくれます。フェルメールの技術に裏打ちされた描写と、時代を超えたメッセージ性は、見る者の心を捉え、作品をより一層魅力的にしています。

もう一度検索