天草炭田

天草炭田について

天草炭田（あまくさたんでん）は、熊本県天草下島の北部及び西部に広がっていた炭鉱群の総称です。この地域は、炭鉱の歴史とともに日本の産業において重要な役割を果たしてきました。

歴史的な背景

天草炭田は、北部炭田が享保年間、南部炭田が天保年間に発見されたと言われています。明治時代初頭より採掘が始まりましたが、1897年には大日本練炭株式会社が北部の桝之水鉱と牛の迫鉱を結ぶ約3.5キロメートルの石炭輸送鉄道を敷設しました。この鉄道により、1900年から1912年までの間、毎月4,000トンもの石炭が生産されていました。一部の地域では、馬車を利用して石炭が運搬されました。中部及び南部炭田も同様に活発に採掘が行われ、特に無煙炭は日本海軍への供給に広く活用されました。

天草炭田は九州の他の炭田と比較すると、ほとんどが中小規模の開発で、交通の不便さから大企業による開発はほとんどありませんでした。また、中央構造線に位置し、地層の褶曲が顕著であり、採掘は非常に難しいものでした。多くが零細企業による運営で、設備投資や安全対策が不充分であったため、労働条件も厳しいものでしたが、そこから得られる良質の無煙炭によって地元企業は1975年までの長い間採鉱を続けました。

この地域では、熱変成を受けていない石炭が「キラ炭」として、熱変成を受けたものが「瓦ヶ炭」として主に使用されました。特に、烏帽子炭坑での良質の無煙炭の産出は日本海軍の支援も受けましたが、浸水問題によって短期間で放棄される事例もありました。

天草炭田の主な場所と生産量

牛深市（現天草市）の魚貫炭鉱は比較的大規模な炭鉱として知られ、西軍に納入される無煙炭の安定供給を行っていました。しかし、エネルギー政策の変化により、1975年に閉山を迎え、結果として天草炭田もその歴史を閉じました。だが、大企業がほとんど参入していなかったおかげで、未開発の深層に500万トン以上の石炭が埋蔵されていると推測されています。

天草地方は多様な産業が栄えており、陶石の産出や観光業、水産業、農業などが発展していました。炭鉱も、小規模なものが多かったため、経済への影響は軽微で、大きな労働者の流出や経済危機も見られませんでした。

昭和30年代の状況

昭和30年代の天草炭田は、古第三紀層に位置し、理論可採炭量が7400万トンともされます。この時期には以下の炭鉱が稼働していました：

• - 北部炭田：逆瀬川、大岳、志岐、苓州、竹之迫、小松、和久登、鞍付、涼松など
• - 中部炭田：今富(旭無煙)
• - 南部炭田：魚貫、権現山、砂月、堀の迫、南天、中之浦など。

これらの地域からは、良質の無煙炭が産出されていました。

天草の無煙炭は、特に高い品位を誇り、灰分10%以下、固定炭素85%以上、発熱量7,500カロリー以上という高い基準を満たしていました。

事故やその他の産業

1954年、志岐炭鉱では海水の流入により水没し、36名の犠牲者が出る痛ましい事故が発生しました。

なお、天草地区は焼き物の原料である陶石としても著名で、1712年に発掘が開始されると、全国や海外へもその産品が広まることになりました。現在でも、日本国内での陶石産地として重要な位置を占め、焼き物や碍子の原料として利用されています。

まとめ

天草炭田の歴史は、地元の産業と文化に密接に関連しており、厳しい環境の中でも、地域の発展に寄与してきました。その品質の高い無煙炭と、陶石産業の両方の側面から考察されるべき重要な地域です。

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