無煙炭

無煙炭（むえんたん）について

無煙炭は、炭化度が最も高いタイプの石炭であり、炭素含有量は90%以上に達します。そのため、燃焼時に発生する煤煙や嫌な臭いが極めて少ないのが特長です。具体的には比重が1.32から1.7、硬度は2から2.5とされ、非常に高品質な燃料として知られています。

産地

無煙炭の埋蔵量が最も多いのはアメリカで、およそ1159億トンを保有しています。次いでインドが824億トン、中国が622億トンと続きます。中でも中国は主な採掘地であり、多くの無煙炭が生産されています。

日本における無煙炭の状況

日本でも少量ですが無煙炭が生産されており、大嶺、秋田、筑豊、海軍炭鉱（新原）、天草などの地域で採取されています。特に海軍炭鉱は、艦船用や工場用のために採掘が行われていた歴史があります。これらは第三紀層に位置する新しいもので、火山岩の熱によって炭化が進んだ質の良い無煙炭が多いとされています。しかし、日本での大規模な無煙炭の採掘は1970年の宇部興産山陽無煙炭閉山以降、行われていません。

アメリカ産の無煙炭

アメリカのペンシルベニア州北東部に位置する「石炭地帯」では、無煙炭が豊富に産出されており、約63億トンの埋蔵量が存在します。19世紀から20世紀初頭にかけて、この地域にはスクラントンやウィルクスバリといった炭鉱の町が形成されました。しかし、1962年に発生したセントラリア炭田の坑内火災により、その後の無煙炭生産は影を潜めています。なお、ここでの石炭業は現在、州内総生産のわずか1%に過ぎず、閉山した炭鉱の残骸は埋め戻しなどの作業が行われています。コロラド州のCrested Butte炭田も既に閉山されています。

カナダとペルーの無煙炭

カナダではアルバータ州のCrow's Nestで無煙炭が採掘されています。また、南米のペルーのアンデス地域でも無煙炭が生産されています。

無煙炭の用途

無煙炭は様々な用途に利用されています。まず、家庭用の練炭やカーバイドの原料として使用されるほか、粉鉄鉱石を塊状に焼結する焼結炉にも適しています。この炭は煙が少なく高い発熱量を持つため、隠密性と機動性が求められる軍艦の蒸気機関燃料としても非常に適しています。特に昭和の前半まで、海軍の主力燃料として重要な役割を果たしていました。また、蒸気機関車の燃料としても広く利用されていました。最近では、焼結に使用される低燐の無煙炭が原料炭の一種として高価で取引されることもあります。さらに、電極原料としての用途もあり、その汎用性は決して少なくありません。

このように、無煙炭はその特性と様々な用途から非常に重要な資源であり、今後も注目され続けるでしょう。

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