天野喜四郎

天野 喜四郎（天野 喜四郎）

天野喜四郎（あまの きしろう）は、1690年（元禄3年）に生まれ、1757年（宝暦6年）に亡くなった江戸時代中期の塩田開拓者です。本名は元明で、彼の生涯は塩田の開発と地域経済の発展に尽力したものでした。

経歴と背景

喜四郎は現代の広島県尾道市吉和町の備後御調郡吉和村に生まれました。彼の生家は海に近い吉和浜に位置し、塩田の経営を行っていました。最初は米屋を名乗っていた喜四郎ですが、地域の塩の生産や販売に関して深い理解と経験を持っていました。

1720年（享保5年）、信濃国の深尾権太夫による干拓が失敗に終わったことを受け、1723年（享保8年）には西条藩からの依頼を受け、伊予黒島村（現：愛媛県新居浜市黒島）に移住することとなります。喜四郎は自らが塩問屋として活動することを条件に地域の年寄らから招かれました。

塩浜の開発

黒島村に移住した年の1724年（享保9年）、喜四郎は6人の浜師と共に、約15町歩の広さをもつ最初の塩浜、多喜浜（古浜）を開発しました。その後、享保の大飢饉が発生した際には、彼は藩に対して助言を行い、難民支援も考慮しながらさらなる開発に着手しました。このとき、彼は275貫の工費を投じて約27町歩の2番目の塩浜（多喜浜東分）を拓きました。

喜四郎の努力と開発活動は、彼の死後も子孫に引き継がれました。特に、彼の子である喜四郎は、1759年（宝暦9年）から久貢新田・郷・松神子に104町歩の塩田・畑を開発し、その後も4代目や5代目・6代目の親子が続けて多喜浜の塩田を拡大しました。これにより、幕末までの200年にわたり、多喜浜地域には約240町歩の大規模な塩田地帯が形成されました。

遺産と顕彰

喜四郎の業績は地域の重要な歴史として評価されており、彼の墓所は久貢山にあります。また、彼が住んでいた久貢屋敷内には顕彰碑が建立されており、屋敷内には彼の手によって植樹されたソテツも現存しています。さらに、多喜浜公民館には喜四郎の業績や塩田開発に関連する資料が展示されており、彼の貢献を忘れないよう地域社会全体で称えられています。

このように、天野喜四郎は塩田開発によって地域の発展を促進し、彼の遺産は今もなお地域の人々によって大切に受け継がれています。

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