太子古墳

太子古墳（大師の唐櫃古墳）

茨城県かすみがうら市安食に位置する太子古墳は、霞ヶ浦と菱木川に挟まれた台地上に築かれた古墳です。地元では「太子のカロウド」とも呼ばれています。この古墳は、1977年（昭和52年）に茨城県指定史跡に指定されており、古墳時代終末期の様相を伝える貴重な遺跡です。

概要

明治時代の開墾によって石室と副葬品が発見されましたが、現在は墳丘が失われています。発掘された情報から、古墳は前方後円形であり、全長は約60メートルと推定されています。埋葬施設である横穴式石室は南方向に開口しており、玄室の側面には朱色の円文が5段にわたって描かれていたことが記録されています。これは装飾古墳としての特徴を示しています。

開墾の際には、直刀、刀子、銀環、須恵器などの副葬品が出土したと伝えられています。これらの出土品は、古墳が築造された7世紀前半頃の社会や文化を知る上で重要な手がかりとなります。

発見と調査の歴史

1890年（明治23年）：開墾中に石室が発見され、直刀、刀子、銀環、須恵器などが出土。
1895年（明治28年）：小室竜之助が『東京人類學會雜誌』に太子古墳を紹介。
1896年（明治29年）：大野延太郎（雲外）が『東京人類學會雜誌』に装飾古墳として報告。
1977年（昭和52年）5月2日：茨城県指定史跡に指定。

埋葬施設

横穴式石室は、全長3.8メートルで、以下のような構造を持っています。

石室全長：3.8メートル
玄室：長さ2.3メートル、高さ1.37メートル
羨道：長さ1.5メートル

石室は後円部に半地下式で構築されており、石材には変成岩が使用されています。玄室の奥壁は一枚石で、両側壁は二枚の石によって構成されています。特筆すべきは、玄室の両側面に朱色で描かれた円文です。現在はほとんど消失していますが、明治時代の報告書にはその図面が残されており、当時の装飾の様子を知ることができます。

文化財指定

茨城県指定史跡
太子古墳 - 1977年（昭和52年）5月2日指定

太子古墳は、地域の歴史と文化を伝える貴重な遺産です。今後の調査や研究によって、さらに多くの情報が得られることが期待されています。

参考文献

史跡説明板（かすみがうら市教育委員会設置）
川崎純徳「太師唐櫃古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年。ISBN 4490102607

関連文献

小室龍之助「常陸國霞蒲沿岸附近ニ於ケル古跡」『東京人類學會雜誌』第10巻第106号、日本人類学会、1895年、137-142頁
大野延太郎「常陸國霞カ浦沿岸旅行談」『東京人類學會雜誌』第11巻第121号、日本人類学会、1896年、286-291頁

関連項目

富士見塚古墳群
風返稲荷山古墳

外部リンク

茨城県教育委員会の太子古墳紹介ページ'>太子古墳 - 茨城県教育委員会
* かすみがうら市歴史博物館の太子古墳紹介ページ'>太子古墳 - かすみがうら市ホームページ「かすみがうら市歴史博物館」

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