太宗寺

太宗寺：新宿の地に息づく歴史と信仰

太宗寺は、東京都新宿区新宿二丁目に位置する浄土宗の寺院です。霞関山本覚院と号し、阿弥陀如来を本尊として祀っています。静寂な境内には、江戸時代からの歴史と信仰が息づいています。

歴史：内藤氏と歩んだ400年

寺伝によれば、太宗寺は慶長元年（1596年）頃、僧・太宗によって開かれた草庵「太宗庵」を起源とします。寛永6年（1629年）、安房国勝山藩主・内藤正勝の葬儀を執り行ったことがきっかけとなり、内藤氏との深い縁が結ばれました。寛文8年（1668年）、正勝の長男・重頼から寺地を寄進され、太宗を初代開山として太宗寺が創建されました。院号である「本覚院」は、内藤正勝の法名に由来しています。

その後、内藤氏が信濃国高遠藩へ移封された後も、太宗寺は高遠藩内藤氏の菩提寺として、歴代藩主や一族の墓所が置かれ、その歴史を刻んできました。かつては広大な内藤家墓所が存在していましたが、昭和27年（1952年）の区画整理事業により縮小され、現在も正勝をはじめとする3基の墓石が残されています。

かつて境内には、蟹川につながる池があり、水が湧き出ていましたが、昭和25年（1950年）に新宿区立新宿公園として整備された際に埋め立てられました。しかし、その後も池跡から水が湧き出ており、現在では水景施設として景観に彩りを添えています。同時期に行われた区画整理事業によって、寺の周辺環境も大きく変化し、花園通りや新たな街路の開通に伴い、寺の敷地形状や入口の位置も変更されました。

文化財：都内有数の貴重なコレクション

太宗寺には、数多くの貴重な文化財が保存されています。

東京都指定有形文化財: 銅造地蔵菩薩坐像（正徳2年（1712年）造立、江戸六地蔵の第三番）
新宿区指定有形文化財: 三日月不動像、観無量寿経曼荼羅
新宿区指定有形民俗文化財: 閻魔像（都内最大級）、奪衣婆像
新宿区指定史跡: 内藤正勝の墓
新宿区指定有形文化財（考古資料）: 太宗寺墓地出土品（鏡、銭貨、人形、眼鏡など910点）
新宿区登録有形文化財（歴史資料）: 切支丹灯篭（織部灯篭で、人物像にマリア説も）

これらの文化財は、太宗寺の歴史と信仰、そして内藤氏との深い繋がりを物語る貴重な証となっています。特に、江戸六地蔵の一つである地蔵菩薩坐像や、都内最大級とされる閻魔像、奪衣婆像は、江戸時代から庶民の信仰を集めてきました。現在も、毎年7月15日・16日の縁日には御開扉され、多くの人々が訪れています。また、新宿山の手七福神の一つである布袋尊像や、「塩かけ地蔵」なども、参拝客に親しまれています。

アクセス：新宿の中心部に位置する寺院

太宗寺は、東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅、新宿三丁目駅から徒歩圏内に位置しており、アクセスも良好です。新宿という大都会の中にありながら、静寂な境内は、都会の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間です。歴史と文化に触れ、安らぎを求める人々にとって、太宗寺は魅力的な場所と言えるでしょう。

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